データで見る日本の観光市場|インバウンド拡大と地方の民泊・宿の5つの課題
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
訪日外国人は2025年に過去最高の約4,268万人、旅行消費額は約9.5兆円。一方で、訪日客の延べ宿泊のうち地方部は34%です。観光庁・JNTOのデータで、地方の5つの課題と、空き家の宿でできることを整理します。
この記事のポイント
- 宿の需要は、数字の上では大きく伸びています。2025年の訪日客は約4,268万人、消費額は約9.5兆円です。2019年と比べ、人数は約1.3倍、消費額は約2倍です。
- 地方の宿には、まだ伸びる余地があります。訪日客の宿泊のうち、地方部は34%です。2025年の数字で、66%は三大都市圏に泊まっています。
- 国の目標が地方向きなので、地方の宿は追い風を受けやすい状況です。政府は2030年に、地方の宿泊を1.3億人泊へ増やす目標です。2025年の地方部の延べ宿泊は約6,056万人泊でした。
- 地方で宿を始める前に、5つの課題を知っておくと備えやすくなります。課題は、都市への集中、人手不足、受け皿の不足、デジタル化、人口減少です。
- 空き家の宿は、地方の受け皿不足を埋める一つの方法になります。下田の宿では、清掃を地元の人に任せ、遠隔で運営しています。
訪日客は、いまどこまで増えたのか?
宿の需要は、数字の上では大きく伸びています。2025年の訪日外国人旅行者数は約4,268万人、旅行消費額は約9.5兆円で、どちらも過去最高です。
※ 2026年10月時点。出典:観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」(2026年3月27日閣議決定)の実績値。2025年の訪日客数は2026年3月発表の暫定値、消費額と1人あたりは2026年1月発表の速報値です。
2025年の人数は2019年の約1.3倍、消費額は約2倍です。差が出たのは、1人あたりの消費額が15.9万円から22.9万円へ、約44%増えたためです。観光庁は、円安や物価上昇、訪日市場が多様になったことを要因に挙げています。
増えた訪日客は地方に泊まっている?地方の宿に伸びる余地はあるのか
地方の宿には、まだ伸びる余地があります。2025年の訪日客の延べ宿泊(のべ宿泊者数)のうち、地方部は34%で、66%は三大都市圏に泊まっています。
34%地方部の割合延べ宿泊・2025年
1.4泊地方部の宿泊数1人あたり・目標は2泊
1.3億人泊2030年の目標地方部の延べ宿泊
※ 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確報値。2026年7月公表)と、観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」。地方部は、埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県以外です。静岡県は地方部に入ります。
2025年の地方部の延べ宿泊は約6,056万人泊で、2024年の約5,086万人泊から増えています。基本計画に載っている速報値は約5,873万人泊で、確報(2026年7月公表)で約6,056万人泊になりました。ただ、政府の目標は三大都市圏と同じ1.3億人泊で、2025年の約2倍にあたります。
1人あたりの地方部の宿泊数は、目標の2泊に届きませんでした。基本計画は、魅力ある観光地の整備、高付加価値旅行者の受入環境、地方へのアクセスに課題があったと分析しています。
静岡県で見ると、外国人の延べ宿泊者の割合は、2023年度の5.0%から2024年度は8.7%に上がりました。出典は、観光庁「宿泊旅行統計調査」の総務省「社会・人口統計体系」収録値(e-Stat)です。観光庁の全体集計とは対象の施設が異なる可能性があるため、割合の動きを見る目的で使っています。
国の目標は、地方の宿にとって追い風なのか?
国の目標が地方向きなので、地方の宿は追い風を受けやすい状況です。政府は2030年に、地方部の延べ宿泊を1.3億人泊へ増やす目標を置いています。2025年の地方部は約6,056万人泊でした。
2026年3月に閣議決定された第5次の観光立国推進基本計画は、2030年の6,000万人・15兆円を据え置きました。そのうえで、地方部の宿泊を増やす目標を新しく置いています。計画の期間は2026〜2030年度です。
- 地方部の延べ宿泊:1.3億人泊(三大都市圏と同じ規模)
- リピーター:4,000万人(地方への訪問意欲が高いため)
- 1人あたりの消費額:25万円
- 宿泊業の付加価値額:6.8兆円(2024年度は4.3兆円)
施策には、空き家に近い分野も入っています。
- 古民家などの歴史的建築物を宿泊施設として整備し、観光に使う
- 関係人口の創出と、二地域居住の促進
- 民間都市開発推進機構のまちづくりファンドによる、宿泊施設の整備への金融支援(リノベーションなども対象)
地方に空き家を使った宿が増えることは、この方向と重なると考えます。
地方で宿を始める前に、知っておきたい5つの課題は何か?
地方で宿を始める前に、5つの課題を知っておくと備えやすくなります。課題は、都市への集中、人手不足、受け皿の不足、デジタル化の遅れ、人口減少です。
※ 2026年10月時点。出典:観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」。
5つは別々の問題ではなく、つながっています。泊まる場所が少ないと消費が地域に落ちず、収益が小さいと人を雇えず、人が足りないと受け入れを増やせません。
空き家の宿は、地方の受け皿不足を埋められるのか?
空き家の宿は、地方の受け皿不足を埋める一つの方法になります。受け皿・集客・人手の課題に、小さな規模から取り組める形です。下田の「NODE Shimoda」(RIVIA&CO.が運営する施設の一例)は、創業メンバーが開業し、次のように運営してきました。
- 既存の建物を受け皿にする:和室中心の住まいを、外国人の長期滞在向けに洋室へ改修しました。
- 予約サイトで評価を集める:開業直後は料金を抑えてレビューを集め、高評価が5件ほどたまってから段階的に上げました。
- 地域の人と運営する:清掃は近隣の個人事業主・複業人材に頼み、手順書をつくって現地で一緒に清掃しました。開業2か月目には、運営者が行かなくても回る体制になりました。
- 仕組みで人手を補う:スマートロックによるセルフチェックイン、日英の定型文、AIチャットボットで、現地へ行くのは数か月に1回ほどです。
ゲストはインバウンドが中心で、ワーケーションやサーフィンが目的の人もいます。夏は長期滞在が多めです。
観光地ではない場所でも、泊まる理由はつくれます。焼津の空き家で宿を準備している例は、「有名観光地でなくても宿になる理由」で紹介しています。
まとめ:数字は追い風。地方では、泊まる理由と受け皿が足りない
訪日客は過去最高を更新しましたが、泊まっているのは都市が中心で、地方部は34%です。政府は2030年に、地方部の延べ宿泊を約2倍にする目標を置いています。
伸びしろは、地方に泊まる理由と、泊まれる場所をつくる側にあります。空き家を宿に再生し、地域の人と運営する形は、その一つの方法です。
よくある質問
Q2025年の訪日外国人旅行者数は何人でしたか?
A約4,268万人で、過去最高です(2026年3月発表の暫定値)。2024年は約3,687万人、コロナ前の2019年は約3,188万人でした。
Q日本政府の観光に関する目標は何ですか?
A2026年3月に閣議決定された第5次の観光立国推進基本計画で、2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円を据え置きました。あわせて、地方部の延べ宿泊1.3億人泊、リピーター4,000万人、1人あたり消費額25万円を目標に置いています。
Q地方の観光の主な課題は何ですか?
A都市・有名観光地への集中、宿泊業の人手不足、受け皿の不足、デジタル化の遅れ、人口減少による担い手不足の5つです。
Q「地方部」とは、どこを指しますか?
A観光庁の統計では、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県の三大都市圏以外の地域です。静岡県は地方部に入ります。
Q空き家は観光の受け皿になりますか?
Aなり得ます。立地や建物の状態、旅館業法や住宅宿泊事業法などの要件を満たせば、一棟貸しの宿として、滞在型の旅行者を受け入れられます。物件ごとに確認が必要です。
参考資料(6件)
- 観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」(2026年3月27日閣議決定)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」(2026年)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年確報値。2026年7月公表)
- 観光庁「インバウンド消費動向調査」(2025年)
- 総務省「社会・人口統計体系」(e-Stat。観光庁「宿泊旅行統計調査」の収録値)
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。