空家法改正の「管理不全空家」とは?固定資産税の特例と、民泊など活用の対策
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
2023年12月から、放置すると危険になりそうな空き家(管理不全空家)も、市から改善を求められるようになりました。正式に求められる(勧告)と土地の税を軽くする決まりが外れます。変化と対策をまとめます。
この記事のポイント
- 危険になる手前の家でも、市から指導を受ける場合があります。管理不全空家等は、特定空家等(倒壊や衛生の問題が著しい家)になる手前の段階です。市にできるのは指導と勧告までで、命令と代執行はありません。
- 勧告を受けると、敷地の税が上がってしまう場合があります。勧告は市からの正式な改善のお願いで、税を軽くする決まりは住宅用地特例です。静岡市は税額が約4倍、三島市は最大6倍としています。
- 勧告から先へ進む家はごく一部なので、早めに手を打てば間に合います。全国の累計は、助言・指導約3.9万件に対し、勧告3,589件、命令456件、代執行(市が代わりに取り壊すこと)213件です(令和6年3月末)。
- 勧告を受けても、税は上がったままになりやすい点に注意が必要です。すぐに特定空家等になるわけではありませんが、勧告が撤回されない限り、税を軽くする決まりは外れたままです。市の窓口に確認を。
改正で、何ができるようになったのか?
危険になる手前の家でも、市区町村から指導を受ける場合があります。特定空家等になる手前の段階から、指導と勧告ができるようになりました。市にできるのは指導と勧告までで、命令と代執行はありません。
二つの区分で、できる措置が違う
特定空家等
倒壊・衛生・景観などの問題が著しい家
- 助言・指導
- 勧告:住宅用地特例が外れる
- 命令:従わないと50万円以下の過料(お金の罰)
- 代執行:自治体が代わりに除却など
※ 管理不全空家等で勧告を受けても、自動的に特定空家等になるわけではありません。特定空家等と判断された場合は、助言・指導からやり直します。
2015年に施行された空家法(空き家対策の法律)が対象にしたのは、倒壊の危険や衛生上の問題が著しい「特定空家等」です。市区町村は、助言・指導、勧告(正式な改善のお願い)、命令(従う義務のある通知)、代執行(持ち主に代わって取り壊すなど)の順に措置を進められます。一方、その手前の家には、法律にもとづく指導の仕組みがありませんでした。
2023年12月13日に施行された改正法は、適切に管理されておらず、放置すれば特定空家等になるおそれのある家を「管理不全空家等」と定めました。市区町村は、この段階から所有者に指導し、改善されなければ勧告できます。
勧告に進めるのは、指導をしても改善されず、特定空家等になるおそれが大きいと認めたときです。管理不全空家等には、命令と代執行は用意されていません。
国のガイドラインには、2つの区分の状態の例が載っています。
※ 国のガイドライン別紙の例の一部です。基準1つで決まるのではなく、周りへの影響も含めて市区町村が総合的に判断します。
勧告を受けると、税はどう変わるのか?
勧告を受けると、敷地の税を軽くする住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税(毎年かかる土地・建物の税)が上がってしまう場合があります。
人が住む家の敷地には「住宅用地の特例」があり、固定資産税の課税標準(税額のもとになる金額)が、200㎡までの部分で6分の1、それを超える部分で3分の1に下がります。
管理不全空家等でも特定空家等でも、勧告を受けるとこの特例の対象から外れます。外れたあとの負担は、自治体の案内で次のとおりです。
※ 2026年10月時点。実際の金額は土地の評価額で変わります。
勧告を受けたあとは、税が上がったままになりやすい点に注意が必要です。管理不全空家等で勧告を受けても、すぐに特定空家等になるわけではありません。ただ、国のガイドラインは、状態が悪化して特定空家等になった場合でも、勧告が撤回されない限り、特例が外れた状態は続くとしています。撤回の扱いは自治体の判断なので、市の窓口に確認してください。
勧告から先へ進む家は、どれくらいあるのか?
勧告から先へ進む家は、ごく一部です。国の調査(令和6年3月末時点)で、特定空家等への措置を段階ごとに見ると、件数は進むほど減っています。
※ 平成27年度から令和5年度までの延べ件数です。同じ家を追った数ではなく、略式代執行・緊急代執行は含みません。
勧告まで進んだのは、助言・指導の件数の1割弱です。助言・指導を受けた家の大半は勧告まで進んでおらず、早めに手を打てば間に合う余地があると考えます。静岡県内で命令と代執行まで進んだのは、浜松市と伊豆の国市の各1件でした。
管理不全空家等の指導は、施行から令和6年3月末までの約3か月半で全国1,091件、勧告は0件です。静岡県内の指導と勧告も0件でした。
勧告の前に、所有者は何をすればよいのか?
国の例に挙がる状態を手がかりに、先にやっておくことは次の4つです。窓口への相談も、通知が届く前にできます。
対策 1雨漏りを止める
雨水が入った痕跡は、管理不全空家等の状態の例です。換気や通水とあわせて確かめます。
対策 2屋根・外壁・窓を直す
外装材の剥落や窓・戸の破損も例に挙がっています。庭木の枝や幹も見ます。
対策 3窓口に聞く
遠方で行けないときは、市の空き家担当に、相談先や助成制度を尋ねます。
対策 4使い道を決める
売る・貸す・宿として活かす。静岡市も、管理が難しければ活用・売却・解体を勧めています。
横にスワイプで続きを見られます
遠方に住んでいたり、直し方が分からなかったりする所有者には、除却(取り壊し)・修繕・管理の相談先や使える助成制度を、自治体が紹介する対応が国のガイドラインに挙がっています。静岡県内の窓口は次のとおりです。
※ 2026年10月時点の各市の公式ページの記載にもとづきます。
見回りを頼むと、二本松市のシルバー人材センター(高齢者が地域で働く団体)の例(2021年の市の案内)で1回3,000円、月1回なら年36,000円です。草刈りや処分費を含めた金額は空き家を持ち続けるお金にまとめています。
※ 見回りの料金は、市によって異なります。
持ち続けるか、手放すか。管理不全空家等の段階から勧告が出せるようになり、税の特例が外れる場面が早まりました。勧告まで進む家は一部ですが、外れたあとは撤回されるまで続きます。
放置した場合の負担の全体像は実家・祖父母の家を放置するとどうなる?で、活用の選択肢は空き家の活用方法と向き不向きで紹介しています。
よくある質問
Q管理不全空家かどうかは、誰が判断しますか?
A空き家がある市区町村が、国のガイドラインを参考に、建物の状態と周りへの影響をあわせて判断します。管理が足りていないからといって、すぐ該当するわけではありません。気になるときは、市の空き家担当に聞けます。
Q勧告を受けたら、必ず特定空家になりますか?
Aなりません。管理不全空家等として勧告を受けても、特定空家等かどうかは建物の状態で別に判断されます。特定空家等と判断された場合は、助言・指導からやり直します。ただし、勧告が撤回されない限り、住宅用地特例が外れた状態は続きます。
Q遠方に住んでいて管理に行けません。どうすればよいですか?
Aまず市の空き家担当に相談します。国のガイドラインでは、除却・修繕・管理の相談を受けられる法人や、使える助成制度を自治体が紹介する対応が挙がっています。空き家の管理サービスに見回りを頼む方法もあります。使う予定がなければ、売る・貸す・宿として活かすことも選べます。
Qすでに勧告を受けています。特例は戻りますか?
A勧告が撤回されるまでは、外れたままです。撤回の扱いは自治体の判断なので、窓口に、何を直せばよいかを聞くところから始めます。
参考資料(7件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。