民泊・小さな宿の開業資金はどう用意する?自己資金・融資・補助金の組み合わせ
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
小さな宿を開業するには、物件の取得や改修、設備、開業後の運転資金まで、まとまった資金が必要です。必要な資金の内訳と、自己資金・融資・補助金をどう組み合わせるか、事業計画づくりのポイントを解説します。
この記事のポイント
- 初期費用は、宿の形でかなり変わります。取材した事例では、別荘を自分たちで直した約80万円から約500万円まで、私たちの宿は改修と備品で約650万円でした。
- 融資と補助金を組み合わせれば、自己資金を抑えられる場合があります。取材した事例では、自己資金100万〜150万円に、日本政策金融公庫の融資200万〜400万円を組み合わせる形が多く見られました。
- 融資は、法人名義より個人名義で相談したほうが進んだ例があります。私たちは、法人名義での相談が見送られ、個人名義で融資が決まりました。
- 補助金は、工事を頼む前に要項の条件を確かめておきます。私たちの宿では、要項に「市内の工務店との契約」の条件があり、相見積もりの結果と照らして判断しました。
- 融資の面談では、需要の根拠と許可の見通しを、資料で示せるように準備します。取材した事例では、周辺の宿の稼働データや、保健所・消防署との事前協議の記録を使っていました。
小さな宿の開業に、実際いくらかかったのか?
初期費用は、宿の形でかなり変わります。取材した民泊の事例と、創業メンバーの宿を並べると、約80万円から約650万円まで幅がありました。
※ 取材した事例の数字は、取材時点のオーナー本人の申告です。物件の購入費を含むかなど、費用の範囲は事例ごとに違い、同じ条件の比較ではありません。創業メンバーの数字は、本人の開業記録(2025年11月執筆)にもとづきます。
差が出るのは、物件を買うか借りるか、水回りや消防設備の工事がどれだけ要るか、自分で手を動かすかです。築45年の家を宿にしたFさんは、水回りだけで予算の半分近くになり、消防設備も想定の約1.5倍かかりました。見積もりの1〜2割を予備費として見込んでおくと、想定外の出費に慌てずに済みます。
許可や届出の流れは、「民泊を始めるまでの7ステップ」で説明しています。
融資と補助金で、自己資金はどこまで抑えられるのか?
融資と補助金を組み合わせれば、自己資金を抑えられる場合があります。上の事例では、自己資金100万〜150万円に、日本政策金融公庫の融資200万〜400万円を組み合わせる形が多く見られました。市の補助金150万円を組み合わせたCさんの例もあります。
開業資金の、主な用意の仕方
創業メンバーの宿では、融資は日本政策金融公庫の200万円、自治体の補助金は50万円を使い、残りは自己資金でした。
借りた・もらったお金
日本政策金融公庫の融資200万円
自治体の補助金50万円
自分で出したお金
自己資金残り
補助金の入金工事の後
※ 開業記録では合計額の書き方が資料の中でそろっていないため、合計は載せません。融資の可否や金額は審査で決まります。同じ方法で融資が通るとは限りません。
融資と補助金の金額は、改修費と備品代に対して小さな額で、残りは自己資金でした。この前提を知っておいてください。
法人名義と個人名義で、融資の結果は違ったのか?
違いました。融資は、法人名義より個人名義で相談したほうが進んだ例があります。下田では、法人名義での融資の相談は見送られ、個人名義での相談で融資が決まりました。
1法人名義で相談
「宿泊業の経験がない」ことを理由に、見送られました。
2個人名義で相談
日本政策金融公庫の融資200万円が決まりました。
3感じたこと
担当者によって対応が変わり得ると感じました。
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ここから得た学びは、「融資がなくても、どこまでできるか」を先に設計しておくことです。融資が出る前提で工事を発注すると、見送られたときに計画が崩れます。
なぜ、結果が分かれたのか
見送りの理由として伝えられたのは「宿泊業の経験がない」ことだけです。個人名義で通った理由は、はっきりとは分かりません。ここでは、確かなことと私たちの考えを分けて書きます。
確かなこと
法人名義経験がないとして見送り
個人名義200万円が決定
登記場所静岡市外の代表者の自宅。相談した窓口は静岡市。見送りの際、登記場所について指摘を受けた記憶がある(内容は覚えていない)
公庫の案内対象は、計画を遂行する能力が十分あると認められる方
私たちの考え(推測)
1設立直後の法人には事業の実績がなく、見られるのは代表者個人の経歴になりやすい
2個人名義は、申込者の経歴と計画が一人の話として伝わりやすい
3登記場所と窓口の所在地が違っていたことも、影響したかもしれない
4同じ経歴でも、面談での説明や担当者の受け止めで変わり得る
公庫の案内には、新規開業・スタートアップ支援資金の対象を「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」とする記載があります。創業計画書を出して、計画の内容を確かめる流れです。
私たちの考えでは、「計画を遂行する能力」は、事業の見通しだけでなく、それをやる人の経験や準備の中身で測られます。法人は設立したばかりだと、会社としての実績がありません。そのぶん、代表者個人の経歴が判断の中心になり、宿泊業の経験がないことが前面に出たのかもしれません。個人名義なら、同じ経歴でも、計画と申込者を一つの話として説明できた可能性があります。登記場所が理由で断られたとは言い切れません。見送りの理由として説明されたのは、経験がないことだけです。
※ ここで挙げた考えは、公庫から説明を受けた理由ではありません。
※ 2026年10月時点の、日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の案内にもとづきます。この案内には、自己資金の要件は載っていません。私たちが受けた200万円は、限度額に比べて小さな額です。
名義を決める前に、確かめること
- 代表者の経験:宿泊業の経験がないなら、それをどう補うか。私たちは、経験のある知人が伴走してくれました。
- 法人の実績:設立からの期間と、法人としての実績の有無。ないなら、代表者個人の経歴が見られると考えて準備する。
- 自己資金:私たちは、融資と補助金のほかは自己資金でした。要件は、公庫の窓口で確かめる。
- 登記場所と窓口:法人の登記場所、事業を行う場所、相談する窓口の所在地の関係。どの窓口に相談するかは、公庫の案内で確かめる。私たちは、登記場所が静岡市外の代表者の自宅で、相談先は静岡市の窓口でした。
- 窓口への確認:公庫は、詳しくはお近くの支店へ問い合わせるよう案内しています。名義ごとに、創業時に見られる点を聞く。
断られたときは、どう動くか
私たちは、次の順で動きました。
動き 1名義を変えて相談
法人名義が見送られたあと、個人名義で相談しました。
動き 2融資なしの計画を持つ
融資が出なくても、どこまでできるかを先に設計しました。
動き 3見積もりで費用を抑える
工務店は3社の見積もりから選び、解体の一部は自分でやりました。
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※ 審査の結果は、事業の内容や申込者の状況で変わります。「この名義なら通る」とは言えません。融資の限度額・金利・返済期間・自己資金の要件は、日本政策金融公庫の最新の案内で確かめてください。
取材したオーナーの例です。実績ゼロの個人事業主として、観光動向と体験プランまで盛り込んだ事業計画書で、日本政策金融公庫の融資400万円を受けたDさんご夫婦の例があります。詳しくは「元・仕出し屋を民泊に|公庫融資400万円で改装、月商60〜70万円の事例」で紹介しています。
取材したオーナーの例です。賃貸マンションを借りて民泊にしたEさんは、自己資金50万円と公庫の融資150万円で、初期費用約200万円で始めました。詳しくは「会社員の民泊副業|賃貸で始め、月の純利益12〜15万円・作業は週1〜2時間の事例」で紹介しています。
資金計画は、誰が改修費を持つかで、どう変わるのか?
同じ宿づくりでも、改修費を借り主が持つか、建物の所有者が持つかで、用意する資金は大きく変わります。私たちの宿は他者所有の賃貸物件で、借り主である私たち創業メンバーが改修を負担しました。
創業メンバーの宿では、改修だけで約410万円かかり、融資200万円と補助金50万円を使っても、残りは自己資金でした。借りた元・仕出し屋を改修したDさんご夫婦も、工事費約500万円のうち400万円を融資でまかなっています。借り主が改修を持つ契約では、融資が見送られたときの不足額が大きくなります。借りた建物を融資で改修するなら、賃貸借の期間が返済の期間より短くならないかも確かめます。
物件を借りる前に、改修を誰が持つのかを契約の条件として確かめてください。そのうえで、「融資がなくてもできる範囲」を決めます。
補助金は、工事を頼む前に何を確かめるのか?
工事を頼む前に、要項の条件を確かめておきます。私たちの宿の開業では自治体の補助金50万円を使えましたが、要項に「市内の工務店との契約」が条件として入っていました。補助金だけをあてにしない計画のほうが安全です。
注意 1施工業者が指定される
このときの補助金は、市内の工務店との契約が条件でした。相見積もりの結果と照らして判断しました。
注意 2原則として後払い
工事の費用をいったん支払い、完了後に受け取る仕組みが一般的です。
注意 3採択されないこともある
審査があり、申請すれば必ず受け取れるわけではありません。
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伊豆の2町では、空き家の改修費に最大50万円の補助が出る場合があります。西伊豆町と松崎町が対象で、対象は空き家バンク登録物件の居住部分です(※2026年10月時点)。
※ 2026年10月時点の各町の公式ページの記載です。対象は「居住部分」の改修で、宿として使う建物の改修に使えるとは限りません。金額や条件は年度ごとに変わるため、申請の前に町の担当課へ確かめてください。
制度の探し方や、小規模宿に使える補助金の全体像は、「小規模宿の補助金」の記事で解説しています。
融資の相談に持っていく事業計画には、何を書くのか?
- 動機と経験:なぜ宿をやるのか。経験がないなら、それをどう補うか(運営の委託先、伴走してくれる人など)。
- コンセプトと客層:どんな宿で誰を迎えるのか。私たちの宿は、欧米を中心とした外国人の長期滞在者を想定しました。
- 売上の根拠:周辺の宿の料金や稼働の傾向から、客室単価と稼働率を見積もる。
- 費用と返済:運営費と返済額を引いても、手元に資金が残るか。
取材した事例では、面談で聞かれたことに、次のような資料で答えていました。
※ オーナー本人の申告です。審査は申込みごとに公庫が判断します。
創業メンバーの法人名義の相談が「宿泊業の経験がない」ことを理由に見送られたのは、上の1番目(動機と経験)が弱いと見られた可能性があります。
※ この見立ては私たちの推測です。
収益の見込みの立て方は、「AirDNAで小規模宿の収益をシミュレーション」も参考になります。
結局、どう計画すればよいのか?
借りられる額からではなく、融資も補助金も出なかった場合に、どこまでできるかから逆算します。物件を借りるか、自分で手を動かすかで、初期費用は数十万円から数百万円まで変わります。見積もりには予備費を入れ、融資の面談では、需要の根拠と許可の見通しを資料で示せるように準備します。
よくある質問
Q自己資金はどのくらい必要ですか?
A取材した8つの事例では、自己資金は50万〜150万円で、融資や補助金と組み合わせていました。私たちの宿は、融資200万円と補助金50万円のほかは、自己資金でした。必要な割合は融資制度や金融機関で異なるため、日本政策金融公庫などの最新の案内を確かめてください。
Q宿の運営経験がなくても融資は受けられますか?
A実績ゼロで、公庫の融資400万円を受けた取材事例があります(元・仕出し屋を宿にしたDさんご夫婦)。私たちは、法人名義の相談が「宿泊業の経験がない」ことを理由に見送られ、個人名義の相談で融資が決まりました。結果は審査と担当者の判断によるため、受けられると言い切ることはできません。
Q法人名義と個人名義は、どちらで融資を相談すべきですか?
A私たちの例では、法人名義の相談は見送られ、個人名義の相談で融資が決まりました。名義を決める前に、日本政策金融公庫の支店で、創業時に見られる点を確かめてください。※ 理由は公庫から説明を受けたものではなく、どちらが有利とは言えません。
Q補助金があれば、自己資金は少なくて済みますか?
A補助金は原則として後払いで、採択されないこともあります。取材事例のCさんは市の補助金150万円、私たちの宿は50万円でした。工事費はいったん自分で支払う前提で、補助金がなくても成り立つ計画にしてください。
Founder's story
会社員が片道2時間の下田で、民泊を始めた記録
合同会社RIVIA&CO.の代表社員の片井が、はじめて民泊に挑戦したときの体験記です。開業までのリアルと、開業後3か月の歩みをnoteにまとめています。
noteで読む(別タブで開きます)
参考資料(6件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。