民泊は稼働率何%で黒字?損益分岐点を自分で計算するやり方
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
民泊で赤字にならない稼働率は、家賃や清掃費などの数字から自分で出せます。費用を「毎月同じ」と「泊数で増える」に分け、4つの数字を入れる手順を、下田の宿の運営費を見本に解説します。見本は仮の分け方による試算です。
この記事のポイント
- 赤字と黒字の境目は、4つの数字を書き込めば自分で出せます。毎月かかる費用、1泊で増える費用、1泊の料金、月の日数です。
- 費用は「毎月同じ」と「泊まるほど増える」に分けます。家賃は前者、清掃や予約サイトの手数料は後者です。分け方で境目の値は動きます。
- 下田の宿を仮に分けて計算すると、黒字の境目は稼働率(部屋が埋まる割合)で約18%でした。
- 平均が境目を超えていても、赤字の月は出ます。下田の宿の1年目の月別の稼働率は33〜71%。1月は39%で、見本の約18%(試運転3か月の単価・費用で出した値)を上回っていても赤字でした。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法)の民泊は年180日が上限で、稼働率なら約49%です。境目がこれより高いと、制度の範囲では黒字になりません。
損益分岐点とは?赤字と黒字の境目のこと
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになる点のことです。これを超えると黒字、下回ると赤字になります。
民泊でいえば、「月に何泊埋まれば赤字にならないか」の答えです。部屋が埋まっている割合(稼働率)に直すと、「何%埋まれば赤字にならないか」になります。稼働率の見方そのものは、宿の稼働率・客室単価の基本で説明しています。
境目を出す4つの手順
- 01
費用を2つに分ける
毎月同じ/泊数で増える
- 02
1泊で手元に残る額
料金から増える費用を引く
- 03
必要な泊数を出す
毎月同じ費用を割る
- 04
稼働率に直す
月の日数で割る
この記事で出す答えは、「必要な泊数」と「稼働率」の2つです。平均の稼働率や他の人の利回りを探さなくても、自分の家の数字を4つ書き込めば出せます。「始めて赤字になって後悔したくない」という場合に、始める前に確かめる線になります。
ここでいう黒字は、毎月の売上から毎月の運営費を引いた営業利益(本業で稼いだ利益)の黒字です。
※ 初期投資の返済、人件費、税金は含みません。
費用は「毎月同じ」と「泊数で増える」に、どう分ける?
費用は、泊数に関係なく毎月同じものと、泊まるほど増えるものに分けます。前者は固定費、後者は変動費と呼ばれますが、この記事では分かりやすく「毎月同じ費用」「泊数で増える費用」と書きます。
費用の分け方
毎月同じ費用
泊まる人がゼロでもかかる
- 家賃
- 定額のWi-Fi・通信費
- 保険(定額の場合)
- 月定額で頼む清掃
泊数で増える費用
泊まるほど増える
- 予約サイトの手数料
- 1回ごとに頼む清掃
- リネン・消耗品の補充
迷いやすいのが光熱費です。基本料金は毎月同じで、使った分は泊数で増えます。分け方で答えが動くので、どちらに入れたかを自分で決めて、書き留めておきます。
清掃は頼み方で変わります。月いくらの定額なら毎月同じ費用、1回いくらなら泊数で増える費用です。清掃のしくみは清掃・リネンの運営にまとめています。
迷いやすい費用の置き場所を見る
※ 考え方の整理です。実際の分け方は、自分の請求書や契約を見て決めます。
必要な泊数と稼働率は、どう計算する?自分の数字を入れる欄つき
必要な泊数は、毎月同じ費用を「1泊で手元に残る額」で割れば出ます。1泊で手元に残る額は、1泊の料金から、その1泊で増える費用を引いた額です。
黒字になる泊数の式
黒字になる泊数1か月あたり=毎月同じ費用家賃など÷(1泊の料金平均の料金−1泊で増える費用清掃・手数料など)
稼働率に直す式
黒字になる稼働率割合で出る=黒字になる泊数上の式の答え÷月の日数30日など
書き込む欄は4つです。表のとおりに数字を集めます。
- 毎月同じ費用を合計する:請求書や契約書を見て、1か月分に直します。
- 1泊で増える費用を合計する:清掃や手数料を、1泊あたりに直します。
- 1泊の料金を決める:予約サイトの相場などを見て、平均の料金を置きます。
- 式に入れる:泊数が出たら、月の日数で割って稼働率にします。
書き込む前のチェックリスト
- 01
清掃の回数を数えたか
連泊は1回で済む
- 02
手数料率を確かめたか
掲載するサイトごとに違う
- 03
料金の数え方をそろえたか
手数料や清掃料金を含むか
- 04
自分で掃除する時間は
費用に入れるか決める
式の導き方と、稼働率の分母を見る
- 1泊で手元に残る額 = 1泊の料金 − 1泊で増える費用
- 1か月の営業利益 = 泊数 × 1泊で手元に残る額 − 毎月同じ費用
- 営業利益が0になる泊数 = 毎月同じ費用 ÷ 1泊で手元に残る額(これが損益分岐点の泊数です)
- 売上の割合で考える方法もあります。黒字になる月の売上 = 毎月同じ費用 ÷(1 − 泊数で増える費用の割合)。次の見本はこちらで計算しています。
- 稼働率は「埋まった日 ÷ 売りに出した日」です。毎日売りに出すなら月の日数、営業日を絞るならその日数が分母です。分母のとり方で値が変わるので、比べるときはそろえます。
見本:下田の宿の運営費で計算すると、いくらになる?
仮の分け方で計算すると、下田の宿の黒字の境目は、稼働率およそ18%になります。創業メンバーが下田で開業した宿(NODE Shimoda)の、開業から3か月の試運転期間(本格稼働の前の期間)の数字を使った試算です。
月々の運営費は、合計18万円でした。内訳は、家賃5万円、清掃委託2万円、予約サイトの手数料などのシステム利用料8万円、光熱水費・Wi-Fi・消耗品3万円です。
運営費18万円の内訳(割合は計算)
- システム利用料約44%8万円・泊数で増える
- 家賃約28%5万円・毎月同じ
- 光熱水費など約17%3万円・毎月同じと仮置き
- 清掃委託約11%2万円・泊数で増える
※ 分け方は私たちの仮置きです。実際の請求の分類ではありません。
この4つのうち、家賃と光熱水費等(8万円)を毎月同じ費用、清掃とシステム利用料(10万円)を泊数で増える費用に分けました。試運転3か月の売上は約100万円、稼働率は約52%です。
※ 試運転3か月の概算です。通年の数字ではありません。
※ 営業利益ベースの試算で、初期投資の返済、人件費、税金は含みません。下田の宿の条件での計算なので、他の物件の目安にはしないでください。
30日の月でいうと、試運転期間の単価で計算して約5.4泊です。6泊埋まれば、運営費を売上が上回る計算になります。
検算もしておきます。売上100万円から運営費54万円(18万円×3か月)を引くと46万円で、開業記録の営業利益 約45万円とほぼ合います。
この18%の読み方
- 光熱水費等には、泊数で増える分もあります。分け方で数字は動きます。
- システム利用料8万円は、全額を泊数で増える費用と仮置きしました。実際は毎月定額の分が含まれる場合があり、定額の分が多いほど、黒字ラインは高くなります。
- 月ごとの売上は分からないため、3か月の平均を使っています。
平均で境目を超えていれば、毎月黒字になる?
なりません。平均が境目を超えていても、赤字の月は出ます。下田の宿は、1年目の月別の稼働率が33〜71%と大きく動き、1月は赤字でした。
下田の宿の月別の稼働率(1年目・開業月の7月を除く)
- 8月約58%
- 9月約60%
- 10月約52%
- 11月約33%
- 12月約71%
- 1月約39%赤字の月
- 2月約57%
- 3月約61%
※ 1年目の平均は約53%。出典:運営事例の記事。
見本の約18%は、試運転3か月の単価・費用で出した値です。月別の稼働率と目安として並べると、どの月も上回っていました。それでも1月は、閑散期に備品の買い替えが重なって赤字になりました。月ごとの数字や数字の出どころは、下田の賃貸一軒家を宿にした運営事例にあります。
※ 単価が上がっていく1年目の月別の稼働率とは期間がそろわないので、厳密には比べられません。
※ 11月と1月が落ちた理由は、分析できていません。
境目を超えていても赤字になる理由
- 01
月ごとの波がある
平均は、良い月と悪い月をならした数字
- 02
一度きりの費用は式の外
備品の買い替えなど
- 03
高稼働でも費用が増える
清掃や手数料が泊数で増える
※ 境目の稼働率は、赤字にならない保証ではなく、毎月の運営費だけで見た目安です。
取材したオーナーの例(本人の申告)では、稼働率92%でも清掃が月25回以上かかり、実質赤字になっていました。くわしくはほぼ満室なのに赤字だった事例にあります。稼働率だけでは黒字は決まらない、という例です。
私たちは、境目ぎりぎりで始めるのではなく、赤字の月と買い替えの月を耐えられる資金を持って始めるのが安全だと考えます。閑散期の考え方は、民泊の閑散期対策で説明しています。
民泊新法の180日だと、稼働率はいくらまで?
民泊新法の年180日を稼働率に直すと、最大でも約49%です。自分の境目がこれより低ければ、制度の範囲で黒字になり得ます。高ければ、上限の範囲では黒字になりません。
民泊新法(住宅宿泊事業法)は、宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものを対象にしています(第2条第3項)。180日を365日で割ると約49%です(計算)。分母を営業日数にすると、値は変わります。
※ 約49%は法律上の最大値で、自治体の条例で営業できる期間がさらに制限される場合があります。事前に自治体で確認してください。
見本の約18%は、上限の約49%の内側に収まります。ただし下田の宿は、民泊新法の180日の制限を避けて通年で営業するため、旅館業法の簡易宿所の許可を取っています。制度の選び方は、民泊新法と旅館業の違いにあります。
営業利益の黒字と、初期投資の回収は同じ?
同じではありません。営業利益の黒字は毎月の売上と運営費の話、初期投資の回収は最初に出したお金の話で、別に考えます。
2つのラインは別のもの
営業利益の黒字ライン
この記事で出したもの
- 毎月の売上が、毎月の運営費を上回るか
- 初期投資の返済・人件費・税金は含まない
初期投資の回収ライン
別に考えるもの
- 最初に出したお金を、毎月の営業利益で取り戻せるか
- 黒字ラインを超えても、回収には時間がかかる
下田の宿の初期費用は、改修約410万円と家具・家電・備品約240万円の、合計約650万円でした。運営事例の記事では、家具・家電・設備工事などの購入費を基準にした指数で、開業約14か月で約98%を回収した(2026年9月時点)と報告しています。
※ 改修費の扱いが異なるため、650万円の回収期間ではありません。
営業利益に入らないものを見る
- 初期投資の返済:融資を受けた場合の元本と利息は、別に払います。
- 人件費:自分で清掃や対応をした時間は、お金が出ていかなくても、費用として考えるか決めておきます。
- 税金:所得税などの扱いは、税務署や税理士に確認してください。
利回りの考え方は民泊の投資利回り、開業前の売上の試算は収益シミュレーションにあります。
まとめ:4つの数字を書き出して、始める前に境目を知る
まず、毎月同じ費用・1泊で増える費用・1泊の料金・月の日数の4つを書き出します。式に入れると、黒字になる泊数と稼働率が出ます。
境目は、物件と費用の分け方で変わります。下田の宿の約18%は、仮の分け方による見本です。平均が境目を超えていても、赤字の月は出ます。
次にやることは2つです。自分の4つの数字を書き出すこと。分け方に迷う費用は、そのまま持ち寄って相談することです。開業の流れは民泊を始めるまでの7ステップにあります。
「うちの条件で、どこまで埋まれば足りるのか」という段階から、空き家再生事業・開業・運営支援事業でご相談を受けています。
※ 本記事の数字・制度は、2026年10月時点の内容にもとづきます。
よくある質問
Q損益分岐点とは何ですか?
A売上と費用がちょうど同じになる点のことです。これを超えると黒字、下回ると赤字になります。民泊では、月に何泊、または稼働率が何%埋まればよいかの形で出します。
Q民泊は稼働率が何%あれば黒字ですか?
A物件によって違うため、自分の数字を式に入れて出します。下田の宿の見本は、家賃と光熱水費等を毎月同じ費用、清掃とシステム利用料を泊数で増える費用と仮に分けると、およそ18%でした。※ 営業利益ベースで、この宿の条件での試算です。システム利用料8万円は全額を泊数で増える費用と仮置きしており、実際は毎月定額の分が含まれる場合があります。定額の分が多いほど、黒字ラインは高くなります。
Q固定費と変動費は、どう分けますか?
A家賃など泊数に関係なく毎月同じ費用と、予約サイトの手数料や1回ごとの清掃など泊数で増える費用に分けます。光熱費は両方の性格があり、分け方で答えが動くため、請求書を見て決めます。
Q民泊新法の180日で黒字になりますか?
A年180日は稼働率で約49%です(180÷365の計算)。自分の境目がそれより低ければ、制度の範囲で黒字になり得ます。高い場合は、制度の範囲では黒字になりません。
Q稼働率が高ければ安心ですか?
Aそうとは限りません。取材したオーナーの例(本人の申告)では、稼働率92%でも清掃が月25回以上かかり、実質赤字でした。稼働率と一緒に、泊数で増える費用も確かめます。
参考資料(5件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。