民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違い|空き家で宿を始める選び方
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読了目安 約4分
執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
空き家に料金をもらって人を泊めるには、都道府県などへの「届出」か、保健所での旅館業の「許可」が要ります。年に泊められる日数、手続き、建物の条件の違いを比べ、目的に合う選び方と開業までの流れを紹介します。
この記事のポイント
- 空き家に人を泊めるなら、まず届出か許可のどちらかを選びます。お金をもらって人を泊めるなら、手続きが要ります。選ぶのは、都道府県などへの届出で済む「民泊新法」か、保健所での許可が要る「旅館業法」です。民泊新法の正式名称は住宅宿泊事業法です。
- 民泊新法なら、手続きが軽く、始めやすい場合があります。反面、泊められるのは年180日までです。自治体の決まり(条例)で、さらに短くなる場合もあります。
- 簡易宿所なら、1年を通して営業できる場合があります。泊められる日数に上限がありません。旅館業の許可の種類のひとつで、許可が必要で建物の条件も厳しいですが、1年を通して稼ぎやすい仕組みです。
- どちらを選んでも、家を買う前に役所へ相談しておくと安心です。消防法・建築基準法・条例の確認が欠かせません。消防法は火事への備え、建築基準法は建て方の決まりです。家を買う前に、役所へ相談するのが安全です。
そもそも許可や届出は必要?
結論
お金をもらって人を泊めるなら、手続きが要ります。宿泊料を受け取って人を宿泊させる営業は、原則として旅館業法(宿を営業するための法律)の許可(保健所)が必要です。
選ぶのは、保健所での許可が要る旅館業法か、都道府県などへの届出で済む民泊新法です。2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)にもとづいて届出をすれば、住宅を使って一定の範囲で宿泊サービスを提供できます。
「空き家を少し貸すだけ」でも、宿泊料を受け取って不特定の人を泊めるなら、どちらかの手続きが要ります。
民泊新法と簡易宿所では、日数と手続きがどう違うのか
民泊新法は手続きが軽く、始めやすい場合があります。反面、泊められるのは年180日までで、自治体の条例でさらに短くなる場合もあります。数え方や超えたときの扱いは、民泊新法の年180日ルールにまとめています。
民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違い
民泊新法
住宅宿泊事業法
- 届出で始められる
- 営業は年180日まで
- 住宅のまま使える
旅館業(簡易宿所)
旅館業法
- 許可が必要
- 営業日数の上限なし
- 用途や設備の基準を満たす
※ 自治体の条例で、区域や営業日がさらに制限されることがあります。
簡易宿所は、1年を通して営業できる場合があります。泊められる日数に上限がなく、旅館業の許可の種類のひとつですが、許可が必要で建物の条件も厳しくなります。
※ 要件の詳細は自治体によって異なります。必ず物件所在地の自治体・保健所・消防署に確認してください。
目的別:どちらを選ぶべきか
民泊新法が向くケース
使い方自宅の一部、ときどき使う家
始め方まず小さく試したい
立地住居専用地域の物件
簡易宿所が向くケース
営業年間を通して事業にする
投資稼働日数で回収したい
運営一棟貸しを本格運営
なお、一部の地域では、国家戦略特別区域法にもとづく「特区民泊」(国が指定した特別な区域だけの民泊制度)も利用できます。
運営を任せる管理会社については、「住宅宿泊管理業者とは?」で説明しています。
開業までの流れ
- 目的と予算を決める:副業として小さく始めるのか、事業として収益を最大化するのかで、選ぶ制度が変わります。
- 物件の法令チェック:用途地域、建築基準法、消防法の観点から、宿泊施設として使えるかを確認します。
- 行政への事前相談:保健所・消防署・建築の担当部署に相談し、必要な設備や手続きを確認します。
- 改修・設備工事:消防設備(自動火災報知設備など)や水回り、客室を整えます。
- 届出・許可申請:必要書類を揃えて届出または許可申請を行います。
- 運営準備:予約サイトへの掲載、予約管理システム、清掃体制、ゲスト対応の準備をします。
開業までの全体の手順は、「民泊を始めるまでの7ステップ」で説明しています。
家を買う前に、役所で何を確かめておくのか?
どちらを選んでも、家を買う前に役所へ相談しておくと安心です。消防法(火事への備え)・建築基準法(建て方の決まり)・条例の確認が欠かせません。よくある失敗は次の4つです。
失敗 1買ってから許可不可と判明
用途地域や建物の構造によっては、旅館業の許可が取れない場合があります。必ず取得前に確認しましょう。
失敗 2消防設備の費用の見落とし
宿泊施設には一般住宅より厳しい消防設備が求められることがあり、想定外の費用になることがあります。
失敗 3条例による営業制限
民泊は自治体の条例で、営業できる地域や期間が制限される場合があります。
失敗 4近隣への説明不足
騒音やごみ出しのトラブルは、事前の説明とルールづくりで防ぎます。
横にスワイプで続きを見られます
消防設備については、「民泊・小さな宿の消防設備ガイド」で説明しています。
まとめ:制度選びは「目的」と「物件」で決まる
空き家で宿を始めるには、民泊新法の届出か旅館業法の許可のどちらかが必要です。始めやすさを優先するなら民泊新法、年間を通した収益性を優先するなら旅館業(簡易宿所)が向いています。
いずれの場合も、物件を取得する前の法令チェックと行政への事前相談が、失敗を防ぐいちばんの近道です。
よくある質問
Q民泊と簡易宿所では、どちらが収益を上げやすいですか?
A一般に、営業日数の上限がない旅館業(簡易宿所)のほうが、年間を通して稼働できるため収益を上げやすい仕組みです。ただし許可要件や初期費用も異なるため、物件と目的に合わせて比べて決めましょう。
Q賃貸物件でも宿泊施設を始められますか?
A可能な場合もありますが、建物所有者の承諾が必要です。マンションの場合は、管理規約で民泊が禁止されていないかも確認してください。
Q開業までにどれくらいの期間がかかりますか?
A物件の状態や改修の規模、自治体の手続きによって大きく異なり、数週間から数か月かかるのが一般的です。事前相談の段階から、スケジュールを組んでおきましょう。
Founder's story
会社員が片道2時間の下田で、民泊を始めた記録
合同会社RIVIA&CO.の代表社員の片井が、はじめて民泊に挑戦したときの体験記です。開業までのリアルと、開業後3か月の歩みをnoteにまとめています。
noteで読む(別タブで開きます)
参考資料(3件)
- 観光庁「民泊制度ポータルサイト」
- 厚生労働省「旅館業法について」
- 国土交通省「住宅宿泊事業法」関連資料
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。