空き家の活用で、なぜ民泊・小さな宿が選ばれるのか
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読了目安 約4分
執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
空き家の活かし方のなかで、民泊(住まいに旅行者を有料で泊めること)や小さな宿が選ばれる理由を整理します。住む人が見つからなくても泊まる人はいること、古い家の趣が魅力になること、家を残したまま収入にできることを説明します。
この記事のポイント
- 住まいとして借り手がつかない家でも、泊まる場所としてなら選ばれることがあります。
- 開業3か月で、売上が約100万円になった例があります。下田の宿の試運転の期間で、稼働率(部屋が埋まっている割合)は約52%、営業利益(売上から費用を引いた利益)は約45万円でした。
- 毎月の運営費を知ると、手元に残るお金を見積もれます。運営費は約18万円で、家賃5万円を含みます。手元に残るのは、売上から運営費を引いた残りです。
- 遠方からでも、現地に行くのは数か月に1回ほどで運営できた例があります。許可は旅館業法の簡易宿所(旅館業法にもとづく宿の営業許可の一種)で、運営は外注と仕組みにより回しています。
住まいとして売れない家が、宿なら選ばれるのはなぜか?
住まいとして借り手がつかない家でも、泊まる場所としてなら選ばれることがあります。旅行者が探しているのは住む場所ではなく泊まる場所で、住まいの需要と宿の需要は別だからです。
空き家の活用で、宿が選ばれる4つの理由
- 01
住まいの需要が少なくても
旅行者は泊まる場所を探している
- 02
古い家の趣が価値に
その土地らしさを感じられる
- 03
まるごと泊まる需要
家族・グループ・長期滞在
- 04
家を残したまま収入に
維持費をまかなえる
地方の空き家は、住まいとして借りたい人や買いたい人が少ないことがあります。それでも、自然や温泉、まちの雰囲気に魅力があれば、宿として選ばれる可能性があります。2025年の訪日外客数(日本を訪れた外国人旅行者の数)は約4,268万人で、過去最多でした(日本政府観光局・推計値)。その土地に暮らすように泊まる旅が広がっている、というのは私たちの見方です。
家族や友人のグループ、長く滞在したい人には、一軒をまるごと借りられる宿が選ばれます。台所や広い居間がある空き家は、そうした旅行者に使いやすい宿になります。
静岡県下田市で創業メンバーが借りて運営する宿(NODE Shimoda)のゲストは、海外からの訪日客が中心です。ワーケーションやサーフィンが目的の人もいて、夏は長期の滞在が多めです。
古い家の趣は、宿でどう価値になるのか?
新しい住まいとしては「古い」とされる梁や建具、畳の部屋が、宿では「その土地らしい体験」になります。ただし趣を残すだけでは足りず、泊まる人が必要とするものを足します。
私たちの宿は、旧町内にある賃貸の物件を改修した一棟貸し(家を1棟まるごと貸す宿)です。和室の間取りを、欧米を中心とした外国人の長期滞在者に向けた洋室に変えました。
お金をかけたのは睡眠(マットレス)と仕事(ワークデスク)で、小物は抑えました。洗濯機と乾燥機、調理器具の充実も、長期滞在のゲストから評価されています。宿泊者は「和モダンな室内がとてもオシャレで、快適でした!お部屋の居心地がよく、下田旅行の素敵な思い出になりました。」とレビューを寄せています(2026年9月・1泊)。
家を残したまま、どれくらい収入になるのか?
開業3か月で、売上が約100万円になった例があります。家は手元に残りますが、収入は売上から運営費を引いた残りで、季節の波もあります。私たちの宿の最初の3か月の数字で確かめます。稼働率は、泊まれる日数のうち実際に泊まった日の割合です。
約52%稼働率3か月の平均
約100万円売上3か月の合計
約45万円営業利益3か月の合計
この3か月は、本格営業の前の試運転の期間です。営業利益は、売上から運営費を引いた利益です。月の売上は最大で約60万円で、本格稼働後は売上も利益もさらに伸びました。
毎月の運営費を知ると、手元に残るお金を見積もれます。運営費は計18万円で、家賃5万円を含みます。手元に残るのは、売上から運営費を引いた残りです。
※ 試運転期間の資料の値です。物件は他者所有の賃貸で、家賃を運営費に含めています。持ち家の空き家なら家賃の項目は要りませんが、改修と備品の初期費用(下田は改修工事約410万円、家具・家電・備品約240万円)は同じように必要です。通年の数字や他の家の見込みとして使わないでください。
賃貸との収入の違いは民泊と普通の賃貸、収入の仕組みはどう違う?で比べています。
手間と法令の壁は、どう越えるのか?
遠方からでも、現地に行くのは数か月に1回ほどで運営できた例があります。許可の取得と日々の運営が壁ですが、順番と外注先を決めれば、現地に行く回数を減らせます。
- 許可の種類を決める:下田は旅館業法の簡易宿所(旅館業法にもとづく宿の営業許可の一種)の許可を取りました。民泊新法(住宅宿泊事業法)の年180日までという営業日数の制限を避け、通年で営業するためです。
- 保健所と消防署に相談する:開業の2か月前に事前相談をして、自分で申請しました。申請から許可まで1〜2か月かかり、許可番号がないと Airbnb で予約を受けられません。
- 運営を仕組みにする:清掃は近隣の個人事業主に外注し、スマートロック(暗証番号などで開く電子錠)でセルフチェックイン(受付なしで入室)にします。自動翻訳と日英の定型文、FAQ を読み込ませたAIチャットボットで問い合わせに答えます。
閑散期(客が少ない時期)は、写真と説明文の更新、最低滞在日数の調整で検索順位を保ちます。こうした課題は「民泊は大変」って本当?で整理しています。
自分で運営する時間がなければ、事業者に借り上げてもらう方法や、運営を任せる方法もあります。運営を任せる(運営委託)場合の手数料や初期費用の分担は、任せる業務の範囲と物件で変わります。
※ 個別の提案が前提です。
市場の全体像は、「データで見る日本の観光市場」で紹介しています。
よくある質問
Qどんな空き家でも民泊にできますか?
A用途地域(土地の使い方のルール)や自治体の条例、建物の基準、消防設備などの条件があります。物件ごとに確認が必要です。
Q民泊と旅館業、どちらで始めるのがよいですか?
A営業したい日数や物件の条件で変わります。私たちの宿は、年180日の制限を避けて通年営業するため、旅館業法の簡易宿所の許可を取りました。違いは民泊新法と旅館業の違いの記事で解説しています。
Q自分で運営しなくても、宿として活かせますか?
A事業者に借り上げてもらう(事業者が家を借りて運営する)、運営を委託する(運営を任せる)などの方法があります。
参考資料(2件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。