実家を放置するとどうなる?固定資産税の負担と「民泊」という選択
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
住んでいない実家は、そのままにしても毎年の税金や管理の手間がなくなりません。法律も変わり、放置しにくくなりました。売る・壊す・貸すと並べて、小さな宿にする道と、始める前の確認点を紹介します。
この記事のポイント
- 実家の空き家で悩むのは、珍しいことではありません。全国の空き家は約900万戸で、住まいの13.8%です。7~8軒に1軒で、どちらも過去最高です(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」)。
- 誰も住まなくても、毎年お金と手間が出ていきます。税金と管理の費用は毎年かかります。土地や建物にかかる税金は固定資産税で、修繕・管理の費用も要ります。2023年の法改正で、管理が悪い空き家は税金が安くなる決まりから外れるおそれも高まりました。
- 相続した家は、放置する前に名義変更を済ませておきます。2024年4月から、相続した家の名義変更が義務になりました。相続を知ってから3年以内に名義を変える手続きで、相続登記といいます。「とりあえず放置」はしにくくなっています。
- 宿にする場合は、初期費用の実例を先に知っておくと計画しやすくなります。下田の賃貸一軒家を宿にした初期費用は、改修約410万円、備品約240万円でした。創業メンバーの個人事業の例で、一般的な金額ではありません。備品は家具・家電などです。
- 始める前に4点を確かめておくと、失敗しにくくなります。確かめるのは、建物・立地・法令・収支です。
実家の空き家で悩むのは、珍しいことなのか
実家の空き家で悩むのは、珍しいことではありません。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年10月時点の全国の空き家数は約900万戸、住宅全体に占める空き家率は13.8%で、いずれも過去最高を更新しました。5年前の調査から約51万戸増えています。
このうち、賃貸用・売却用・別荘などに当てはまらない「使用目的のない空き家」が約386万戸です。これは賃貸用・売却用・別荘のどれにも当てはまらない空き家をまとめた統計上の区分で、放置されている家という意味ではありません。
よくある状況
「実家は地方にあり、自分は都市部に住んでいる」「兄弟の誰も住む予定がない」「思い出があって手放す決心がつかない」。そのまま判断を先送りにして、何年も経ってしまう家は珍しくありません。
誰も住まなくても、毎年どんなお金と手間がかかるのか
誰も住まなくても、毎年お金と手間が出ていきます。家を所有している限り負担は続き、主なものは次のとおりです。
これらは「使っていない家」から一切の収入がないまま、毎年出ていく支出です。放置が長引くほど建物は傷み、活用や売却の選択肢が狭まります。
維持費の内訳は、「空き家の維持費の内訳と見落としがちな費用」で説明しています。
法改正で、「とりあえず放置」はしにくくなったのか
管理が悪い空き家は、税金が安くなる決まりから外れるおそれが高まりました。相続した家は、名義変更が義務になっています。
管理が不十分な空き家は、固定資産税の軽減が外れる可能性
住宅が建っている土地には、税金が安くなる決まり(住宅用地特例)があり、固定資産税の計算のもとになる金額(課税標準)が最大で6分の1に軽減されています。2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法では、放置すれば危険な状態になるおそれのある空き家を「管理不全空家」として新たに位置づけました。自治体から勧告を受けると、この特例の対象から外れ、土地の固定資産税が大きく増える可能性があります。
相続登記が義務になった
相続した家は、放置する前に名義変更を済ませておきます。2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記する必要があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前に相続した不動産も対象で、期限は相続を知った日から3年(施行前の相続には猶予があります)です。
「名義は亡くなった親のまま、特に何もしていない」という状態は、義務化で続けにくくなりました。
空家法の改正は、「空家法の改正で何が変わった?」で説明しています。
売る・壊す・貸す・活かす:4つの選択肢を比較
空き家になった実家の扱いには、大きく4つの選択肢があります。
相続した家の、4つの選択肢
どれが向くかは、建物の状態・立地・家族の意向で変わります。ただ、「何もしない」を選んでも、税金と管理の費用は毎年かかり続けます。
小さな宿にするなら、初期費用はどれくらいかかるのか
宿にする場合は、初期費用の実例を先に知っておくと計画しやすくなります。
下田の賃貸一軒家の初期費用
下田の賃貸一軒家を宿にした初期費用は、改修約410万円、備品(家具・家電など)約240万円でした。創業メンバーの個人事業の例で、一般的な金額ではありません。
創業メンバーが下田で選んだ形
創業メンバーは、下田市で賃貸の一軒家を宿にしました。客層は、外国人の長期滞在者です。許可は、旅館業法(宿を営業するための法律)の簡易宿所(旅館業の許可の種類のひとつ。客室を共用する造りも含み、小さな宿が多い)にして、年180日の制限がない通年営業にしました。
資金は、個人名義で決まった
融資の相談では、法人名義は「宿泊業の経験がない」ことを理由に見送られ、個人名義での相談で決まりました。融資は審査で決まるため、同じ流れで通るとは限りません。
所有を続けたまま使える
「思い出の詰まった家を壊したくない」という場合、宿にすれば家を手放さずに使い続けられます。
運営を任せる方法もある
「遠方に住んでいて自分では運営できない」という場合でも、清掃・ゲスト対応・予約管理を運営会社に委託したり、事業者に建物を貸して家賃を受け取ったりする方法があります。
始める前に確認したい4つのポイント
始める前に4点を確かめておくと、失敗しにくくなります。確かめるのは、建物・立地・法令・収支です。
- 建物の状態:柱や基礎などの構造、雨漏り、耐震性を確認します。構造が健全かどうかは、専門家の現地調査で確かめます。
- 立地と需要:周辺の観光資源、アクセス、競合する宿の状況から、どれくらいの宿泊需要が見込めるかを調べます。
- 法令:住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出にするか、旅館業法の許可を取るかで、営業できる日数や必要な設備が変わります。用途地域(その土地に建てられる建物の種類を決めた区分)や消防設備の確認も必要です。
- 収支:改修費・運営費と、想定される稼働率(部屋が埋まっている割合)・客室単価(1泊の部屋代)から、何年で投資を回収できるかを試算します。
法令の違いについては、民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違い・選び方の記事で詳しく解説しています。
まとめ:「放置」を続けるコストと、活かす選択肢
相続した実家や祖父母の家は、放置しても負担がなくなるわけではありません。税金・管理・修繕のコストは毎年かかり続け、法改正によってそのリスクは高まっています。
一方で、地方の古い家を「小さな宿」として使う選択肢もあります。売却・解体・賃貸の候補に、宿としての活用も加えて比べてみてください。
活用が注目されている背景は、「なぜ今「空き家の活用」が注目されるのか」で紹介しています。
よくある質問
Q空き家を放置すると固定資産税は上がりますか?
A放置しただけで直ちに上がるわけではありません。ただし、管理が不十分で自治体から「特定空家」や「管理不全空家」として勧告を受けると、住宅用地特例の対象外となり、土地の固定資産税が大きく増える可能性があります。
Q相続した実家の登記をまだしていません。どうなりますか?
A2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要です。それ以前に相続した不動産も対象で、期限は相続を知った日から3年(施行前の相続には猶予があります)です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
Q古い家でも宿泊施設にできますか?
A柱や基礎などの構造の状態、耐震性、消防設備、用途地域などの確認が必要です。まず専門家による現地調査をおすすめします。
Q遠方に住んでいて、自分で運営する時間がありません。
A清掃・ゲスト対応・予約管理を運営会社に委託する方法や、事業者に建物を貸して家賃を受け取る方法(借り上げ)があります。
参考資料(4件)
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。