民泊を始めるには何から?届出から開業までの7ステップと、つまずきやすいポイント
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
民泊を始める最初の分かれ道は、年180日までの届出か、1年中営業できる許可か。物件を探す前に決める理由と、消防の確認や管理会社への委託を届出の前に済ませる順番を、下田で許可を取った経験とあわせて解説します。
この記事のポイント
- 届出の民泊は年180日までなので、物件を探す前に営業日数を決めます。民泊の届出で泊められるのは年180日までです。1年中営業したいなら、旅館業の許可(簡易宿所)を取ります。
- 相続した空き家も、民泊に使える場合があります。今は住んでいなくても、将来住む予定があれば「人が暮らす家」の条件を満たす例が示されています。
- 届出の前に、消防署から書類をもらっておきます。消防法令適合通知書という、「消防の基準に合っている」と認める書類です。お客さんが泊まっている間、家主が不在になるとき、または客室が5室を超えるときは、登録を受けた管理業者に運営を任せる決まりもあります。
- 民泊は、届出をしても続かない例が少なくありません。届出された民泊の約37%が、すでにやめています。届出は67,932件、うち24,895件がやめています(2026年9月15日時点)。
- 許可で始めるなら、開業の2か月前に相談を始めます。下田の宿は旅館業の許可を選びました。保健所と消防署への相談は開業の2か月前、申請から許可まで1〜2か月でした。
民泊は届出で始められる?年180日で足りるかが最初の分かれ道
物件を探す前に、年180日の営業で足りるかを決めます。日本で民泊を行う方法は3つあり、年180日以内なら住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出、通年で営業するなら旅館業法の許可(簡易宿所)が選択肢になります。簡易宿所は、旅館業の許可の種類のひとつで、客室を共用する造りも含み、小さな宿が多くあります。もう一つの特区民泊は、国が指定した区域で、自治体が条例で定めた制度です。
180日の数え方と、超えたときの扱いは、民泊新法の年180日ルールで説明しています。
※ 2026年10月時点の観光庁「民泊制度ポータルサイト」の比較表にもとづきます。特区民泊は、認定制度を設けた自治体でだけ使えます。
創業メンバーが下田で宿を開いたときは、旅館業法の簡易宿所の許可を選びました。民泊新法の年180日の制限を避け、通年で営業するためです。
許可番号がないと、Airbnb で予約を受けられません。許可を選ぶと手続きは増えますが、日数の上限を気にせず、閑散期の工夫や長期滞在の受け入れもしやすくなります。
2つの制度の違いは、「民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違い・選び方」で説明しています。
空き家でも民泊の届出はできる?物件で先に確かめる4点
相続した空き家も、民泊に使える場合があります。ただし、住宅としての条件(設備要件=台所・浴室などがあること、居住要件=人が暮らす家であること)と、貸主の承諾・管理規約(マンションの住民ルール)・条例(自治体のルール)を、物件を決める前に確かめます。
確認 14つの設備がある
台所・浴室・便所・洗面設備が届出住宅にあること。浴槽がなくシャワーだけでも足ります。近隣の公衆浴場では代わりにできません。
確認 2居住要件を満たす
生活の本拠、入居者の募集中、随時居住のいずれか。相続した空き家で将来住む予定がある場合も例に挙がっています。
確認 3借りた家は貸主の承諾
賃借人・転借人は、貸主が民泊目的の転貸を承諾しているか。届出の前に確認が求められます。
確認 4規約と条例
マンションは管理規約で禁止されていないこと。条例で実施が制限される地域もあります。
横にスワイプで続きを見られます
居住要件の「随時居住」には、少なくとも年1回以上は使っている家屋が当たります。観光庁の資料は具体例として、相続で所有していて今は常時住んでいないが将来住む予定の空き家や、別宅として使っている古民家を挙げています。
一方、居住といえる使用履歴が一切ない、民泊専用の新築投資用マンションは当たりません。
※ 2026年10月時点の観光庁「民泊制度ポータルサイト」(対象となる住宅、届出の手続き)の記載にもとづきます。
物件が宿に向くかの見方は、「その空き家、民泊に向いている?」で説明しています。
消防署への相談は、届出の前?設備工事の前?
届出の前に、消防署から消防法令適合通知書(消防の基準に合っていると消防署が認める書類)をもらっておきます。相談は設備工事の前です。観光庁の民泊制度ポータルサイトも、届出前に管轄の消防署へ相談するよう案内しています。
消防法令に適合していない状態で事業を始めると、住宅宿泊事業法にもとづく業務停止命令などの対象になる場合があります。
民泊の届出住宅は、消防法上は原則として旅館・ホテル等と同じ扱いです。家主が不在とならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下なら住宅として扱われます。この判定で、自動火災報知設備(火災を感知して知らせる装置)や誘導灯(避難口を示す照明)が要るかが変わります。
私たちの宿では、保健所と消防署に開業の2か月前に事前相談しました。自分で申請して、申請から許可まで1〜2か月でした。相談の時期が遅れると、設備の工事と許可の順番が詰まります。
設備の中身は、「民泊・小さな宿の消防設備ガイド」で説明しています。
家主が不在なら、管理業者への委託は必須?
お客さんが泊まっている間に家主が不在になるとき、または客室が5室を超えるときは、委託が必須です。民泊新法の届出では、管理業務の全部を、登録を受けた住宅宿泊管理業者(オーナーに代わって宿の運営を担う事業者)に委託する必要があります。
買い物などの短い不在は含まれません。観光庁は、一時的な不在の目安を原則1時間としています。委託は1社にまとめて行い、複数社に分けることはできません。
委託する業務は、宿泊者の衛生確保や安全確保の措置、外国語での案内、宿泊者名簿の作成、周辺への説明、苦情への対応です。登録を受けた住宅宿泊管理業者は、4,740件あります(2026年9月15日時点)。
旅館業の場合
旅館業法の簡易宿所には、管理業者への委託の規定がありません。私たちの宿では、スマートロックのセルフチェックイン、日英の定型文、過去の質問をまとめたAIチャットボット、近隣の清掃パートナーで運営し、現地に行くのは数か月に1回ほどです。
管理会社の選び方は、「住宅宿泊管理業者とは?」で説明しています。
届出したあと、続けるために何をする?
民泊は、届出をしても続かない例が少なくありません。続けるには、宿泊者名簿の作成、2か月ごとの定期報告、標識の掲示、外国語での案内という義務を、届出のあとも果たし続けます。
※ 2026年10月時点の観光庁「民泊制度ポータルサイト」(住宅宿泊事業者編)にもとづきます。
67,932件届出の累計2026年9月15日
24,895件うち廃止約37%
届出の累計は67,932件で、そのうち約37%にあたる24,895件が廃止されています(観光庁、2026年9月15日時点)。私たちは、廃止の理由として次のような事情があるのではないかと考えます。
- 思ったより売上が伸びない:届出は手軽でも、予約が入るかは別の話で、費用を回収できないまま続けにくくなります。
- 手間が想定より大きい:清掃、問い合わせ、名簿づくり、2か月ごとの報告が、副業や兼業だと重くなります。
- 近隣や家の事情で続けにくくなる:苦情や、管理規約・契約上の制限が後から分かる場合があります。
※ 廃止の理由は、この集計には書かれていません。上の3つは私たちの推測です。
開業してから最初の3か月でやること
- 最初の数組で、運営の流れを確かめる:チェックイン、清掃、鍵の受け渡し、問い合わせへの返事を、実際のお客さんで試します。止まった所を直します。
- 予約ページを直す:写真・紹介文・料金の見え方を、予約が入る・入らないの様子を見て直します(「予約が入るページのつくり方」)。
- レビューを集める:滞在後の連絡で、感想をお願いします。最初の数件の評価が、その後の予約に響きます(「レビューの評価を上げる対応」)。
- 数字を見る:稼働率と客室単価を月ごとに記録し、費用と並べて、黒字になる水準を確かめます。
- 最初の定期報告を出す:届出のあと、偶数月の15日までに、前の2か月分の宿泊日数などを報告します。
始めやすい制度ほど、続ける体制と収支の見込みを届出の前に固めておく必要があると考えます。収支の見方は、「稼働率・客室単価・RevPARとは?」で説明しています。
赤字にならない稼働率の出し方は、「民泊は稼働率何%で黒字?損益分岐点を自分で計算するやり方」で説明しています。
まとめ:制度選び、物件、消防、体制、届出の順に進める
許可で始めるなら、開業の2か月前に保健所と消防署への相談を始めます。順番を間違えると、物件を決めたあとで条例や消防の問題が見つかり、計画を見直すことになります。次の7つを、この順に進めます。
- 制度を選ぶ:年180日で足りるか。通年なら旅館業の許可。
- 物件を確かめる:設備要件・居住要件、貸主の承諾、管理規約、条例。
- 消防署に相談する:図面を持って行き、消防法令適合通知書を入手します。
- 設備を整える:消防設備のほか、台所・浴室・便所・洗面設備。
- 運営体制をつくる:家主不在なら管理業者へ委託。清掃・鍵・問い合わせの体制も決めます。
- 届出をする:原則として民泊制度運営システム(国のオンライン届出窓口)から、都道府県知事等へ届け出ます。
- 集客を始める:民泊の届出住宅は、登録を受けた住宅宿泊仲介業者(予約サイトの運営会社)か旅行業者のサイトに掲載します。
私たちの宿は、準備に約7か月かかりました。許可の申請から許可までが1〜2か月、Wi-Fi 工事は申し込みから2か月以上でした。工事や手続きの待ち時間を、最初から日程に入れておく必要があります。
予約サイトの使い分けは、「予約サイトと自社予約、どう使い分ける?」で説明しています。
会社員の方が、始める前に会社の就業規則と20万円ルールを確かめる手順は、「会社員の民泊副業|始める前の確認手順」にあります。
借りた部屋で始める方が、貸主の承諾や管理規約をどう確かめるかは、「賃貸で民泊を始めるには?転貸の承諾書と管理規約の確認手順」で説明しています。
取材したオーナーの例です。旅館業の許可を取って空き家を宿にしたFさんは、事前相談から営業開始まで約6か月かかりました。想定外は、消防設備の費用、開業直後の低い稼働、冬の光熱費の3つでした。詳しくは「空き家を旅館業で民泊に|初期費用400万円・月の純利益は平均25万円の事例」で紹介しています。
自治体によっては、宿泊者から宿泊税を預かって納める仕組みがあります。「宿泊税とは?民泊は対象?」で説明しています。
よくある質問
Q民泊は個人でも始められますか?
Aはい。住宅宿泊事業法の届出は個人でも法人でも行えます。ただし、家主が不在になる場合や居室が5を超える場合は、住宅宿泊管理業者への委託が必要です。
Q届出から営業開始まで、どのくらいかかりますか?
A民泊新法の届出の処理日数は、自治体によって異なります。創業メンバーが下田で取った旅館業の許可の場合は、保健所と消防署への事前相談を開業の2か月前に始め、申請から許可まで1〜2か月でした。消防設備の工事を含めて、数か月の余裕を見ておくと安心です。
Q180日を超えて営業したい場合は?
A旅館業法の許可(簡易宿所など)を取れば、日数の上限なく営業できます。ただし住居専用地域では営業できず、建物の基準や消防設備などの条件が増えます。
Q届出は自分で手続きできますか?
A届出は原則として、観光庁の民泊制度運営システムから電子で行います。届出の前に、消防法令適合通知書の入手など確認しておく事項があります。
Founder's story
会社員が片道2時間の下田で、民泊を始めた記録
合同会社RIVIA&CO.の代表社員の片井が、はじめて民泊に挑戦したときの体験記です。開業までのリアルと、開業後3か月の歩みをnoteにまとめています。
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参考資料(7件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。