民泊・小さな宿の消防設備ガイド|火災報知設備・誘導灯・適合通知書の基本
公開日
更新日
読了目安 約5分
執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
最終的な判断は消防署が行います。民泊や小さな宿に必要な消防設備は、お客さんが泊まっている間に家主が不在になるか、宿泊室の広さ、建物の延べ面積(各階の床面積の合計)で決まります。消防庁の通知にもとづく分かれ目と、適合通知書の取り方を解説します。
この記事のポイント
- 民泊でも、消防の基準は旅館やホテルに近くなります。届出住宅は、消防法上は原則として旅館・ホテル等と同じ扱いです。最終判断は消防署に確認してください。
- 小さな民泊なら、設置する消防設備が少なくて済みます。家主が不在にならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合は、例外として住宅の扱いになります。当てはまるかは消防署に確認してください。
- 小さな建物なら、配線工事を減らして費用を抑えられる場合があります。延べ面積300㎡未満なら、電池式の感知器を使う火災報知設備が使えます。延べ面積は各階の床面積の合計です。階数や状況で使えない建物もあります。
- 届出の前に、消防署から適合通知書をもらっておきます。消防法令適合通知書は、消防の基準に合っていると消防署が認める書類です。下田の宿は、消防署への事前相談を開業の2か月前に始めました。
民泊の建物は、旅館・ホテルと同じ扱いになる?
民泊でも、消防の基準は旅館やホテルに近くなります。民泊の届出住宅は、消防法上は原則として旅館・ホテル等(消防法施行令の別表第1(5)項イ)と同じ扱いです。最終的な判断は消防署が行います。
小さな民泊なら、設置する消防設備が少なくて済む場合があります。例外は、家主が不在とならず、宿泊室の床面積の合計が50㎡以下の場合で、このときは住宅として扱われます。当てはまるかは消防署に確認してください。
※ 消防庁の通知(消防予第330号、2017年10月27日)と、2026年3月時点のリーフレットにもとづきます。最終的な判断は管轄の消防署が行います。
判定には、細かい決まりがあります。宿泊室の床面積は壁の中心線で囲まれた部分で、押入れや床の間は含みません。家主の在・不在は、一戸建てなら棟(建物)ごと、共同住宅(マンションなど)なら住戸ごとに判断します。同じ敷地の母屋と離れは、棟ごとの判断です。
この考え方は、民泊以外で住宅に宿泊施設を設ける場合にも適用されることがあります。旅館業法の許可を受けた簡易宿所(旅館業の許可の種類のひとつ。客室を共用する造りも含み、小さな宿が多い)は、どの扱いになるかを必ず管轄の消防署に確認してください。住宅扱いの場合も、連動型(1つが鳴ると全部が鳴る型)の住宅用火災警報器にすることが望ましいとされています。
民泊新法と旅館業の違いは、「民泊新法と旅館業、どちらで始める?」で説明しています。
小さな宿の火災報知設備は、どこまで軽くできる?
小さな建物なら、配線工事を減らして費用を抑えられる場合があります。延べ面積(各階の床面積の合計)が300㎡未満なら、特定小規模施設用自動火災報知設備が使える場合があります(建物の階数や状況によっては使えません)。電池式の感知器にすれば電源の配線工事が要らず、通常の自動火災報知設備より、費用と工期を抑えやすくなります。
通常の自動火災報知設備は、受信機(感知器の信号を受ける装置)、感知器、配線を組み合わせます。特定小規模施設用には、感知器を電池式にして電源の配線をなくす方式があります。受信機や中継器(感知器と受信機の間で信号をつなぐ装置)を置かず、感知器だけを設置する方式では、工事に着手する前の届出を省けます。ただし、設置後の届出は必要です。
消防庁は、小規模な建物で自分で消防用設備を設置する人向けに、消火器と特定小規模施設用自動火災報知設備の試験結果報告書、設置届出書の記載例と様式を公開しています。
設備 1自動火災報知設備
煙や熱を感知して知らせます。延べ面積300㎡未満は、特定小規模施設用が使えます。
設備 2誘導灯
避難口を示す照明です。建物の規模や構造によっては、設置が免除される場合があります。
設備 3消火器
建物の規模で義務の有無が変わりますが、宿泊施設では備えておくことが望まれます。
設備 4防炎物品
燃えにくい加工をした布製品です。旅館・ホテル等の扱いなら、カーテンやじゅうたんは防炎性能のある製品にします。
横にスワイプで続きを見られます
民泊新法には、消防法とは別の安全措置があります。家主が不在となる場合と、届出住宅の規模が50㎡を超える場合は、非常用照明器具(停電時に避難路を照らす照明)の設置や避難経路の表示などが必要です。地上から数えて3階以上に宿泊室を設けるときは、原則として耐火建築物(火災に耐える構造の建物)にします(国土交通省・消防庁のQ&A)。
古い建物の改修の考え方は、「古民家を宿に改修するポイント」で説明しています。
消防法令適合通知書は、いつ取る?開業までの順番
届出の前に、消防署から適合通知書をもらっておきます。消防法令適合通知書は、消防の基準に合っていると消防署が認める書類です。消防署への事前相談を最初に行い、設備の工事、検査、通知書の交付、届出または許可申請の順に進みます。
開業までの消防の手続き
- 01
事前相談
図面を持って消防署へ
- 02
設備の工事
資格者に依頼して設置
- 03
検査・通知書
消防法令適合通知書の交付
- 04
届出・許可申請
通知書を添えて申請
- 事前相談:建物の図面を持って、管轄の消防署に相談し、必要な設備を確認します。
- 設備の工事:通常の自動火災報知設備は、消防設備士(消防設備の工事ができる国家資格者)などに依頼します。
- 検査・通知書の交付:消防署の確認を受け、消防法令適合通知書の交付を申請します。
- 届出・許可申請:通知書を添えて、民泊の届出または旅館業の許可申請を行います。
観光庁の民泊制度ポータルサイトは、消防法令に適合していない状態で事業を始めると、業務停止命令などの対象になる場合があると注意しています。
創業メンバーが下田で宿を開いたときは、保健所と消防署に開業の2か月前に事前相談しました。自分で申請して、申請から許可まで1〜2か月でした。許可番号がないと、Airbnb で予約を受けられません。工事を先に進めてから消防署に相談すると、設備をやり直すことになりかねないため、相談を最初に置きました。
開業までの全体の手順は、「民泊を始めるまでの7ステップ」で説明しています。
まとめ:物件を決める前に、図面を持って消防署に相談する
消防設備の費用は、建物の規模や構造で大きく変わります。物件を取得してから想定外の工事が見つかることもあるため、物件を決める前に、次の6点をそろえて消防署に相談します。
- 建物の図面と、延べ面積
- 宿泊室の床面積の合計(壁の中心線で測り、押入れ・床の間を除く)
- 家主が宿泊中に不在になるかどうか
- 階数と構造(3階以上に宿泊室を設けるか)
- 共同住宅の一部か、母屋と離れか
- 民泊新法か、旅館業法(簡易宿所)か
この6点があれば、住宅の扱いか、旅館・ホテル等の扱いか、特定小規模施設用が使えるかを、早い段階で確かめられます。結果によって工事費の見通しが変わるため、物件の購入や賃貸借の契約より前に聞いておきます。
よくある質問
Q消防設備の工事費はどのくらいかかりますか?
A建物の規模・構造・必要な設備で大きく異なり、目安は示せません。延べ面積300㎡未満で、電池式の特定小規模施設用自動火災報知設備が使える建物なら、配線工事が少なく、費用と工期を抑えやすくなります。見積もりの前に、消防署に必要な設備を確認します。
Q自分で設置してもよいですか?
A小規模な建物では、自分で設置できる設備があり、消防庁が報告書の記載例と様式を公開しています。通常の自動火災報知設備は、消防設備士などの資格者による工事が必要です。どちらにあたるかは、事前に消防署に確認します。
Q開業後に点検は必要ですか?
A設置した消防用設備は、建物の用途によって定期的な点検と消防署への報告が必要です。住宅扱いの場合は、住宅用火災警報器の点検が中心になります。点検の頻度や報告の要否は用途で異なるため、消防署に確認します。
Q旅館業の簡易宿所でも、同じ判定ですか?
A消防庁の資料では、民泊のほか、住宅において宿泊施設を営むものにも適用されることがあるとされています。簡易宿所の扱いは、設備を整える前に管轄の消防署に確認してください。実際の判断は消防署が行います。
参考資料(5件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。