その空き家、民泊に向いている?立地・建物・法令・運営の4つで見極める
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読了目安 約6分
執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
駅から歩いて10分、古い電気配線、営業の許可が出るまで1〜2か月。下田で賃貸の一軒家を宿にした経験から、立地・建物・法令・運営の4つで空き家を見極める方法を整理します。
この記事のポイント
- 泊める相手を先に決めると、立地選びで迷いにくくなります。下田では、駅徒歩10分で飲食店・コンビニ・スーパーが徒歩圏の賃貸物件を選びました。
- 古い家は、配線を先に確かめないと工事が増える場合があります。私たちの宿は二芯配線で、エアコン・冷蔵庫・電子レンジの同時使用に制約が出ました。改修は約410万円で、3社の見積もりを比べています。
- 保健所と消防署へは、開業の2か月前に相談しておくと進めやすくなります。下田では旅館業法の簡易宿所の許可(小規模な宿として営業する許可)を取り、申請から許可までは1〜2か月でした。
- 運営を仕組みにすれば、現地に行くのは数か月に1回ほどで済む場合があります。下田では開業2か月目には自分が行かなくても回り、清掃は近隣の個人事業主に依頼しています。
立地:その家に、泊まる理由はあるのか?
結論
泊める相手を先に決めると、立地選びで迷いにくくなります。その人が歩いて暮らせるかで立地を見ます。観光地かどうかだけでは決まりません。
民泊に向いているかを見極める4つの視点
- 01
立地
徒歩圏で暮らせるか
- 02
建物
配線と間取りの費用
- 03
法令
許可までの期間
- 04
運営
現地に行かず回せるか
私たち創業メンバーは、宿泊業の経験がない会社員として、開業のころ住んでいた静岡市から車で片道約2時間の下田市で、他者が所有する賃貸物件を宿にしました。いまは東京から運営しています。個人事業としての開業で、会社の設立より前のことです。
ターゲットは、欧米を中心とした外国人の長期滞在者(ノマドワーカー。場所を選ばず働く人)です。物件選びで見たことを、決めた順に並べます。
長期に滞在する人は、毎日の食事や買い物に歩いて行けるかで、過ごしやすさが変わると考えて選びました。
※ 私たちの1件の判断です。すべての地域に当てはまる基準ではありません。
一方で、車での旅行が中心の地域では、見るものが変わります。観光地以外での考え方は有名観光地でなくても宿になる理由で紹介しています。
建物:改修費が膨らむ家かどうかは、何を見て分かるのか?
結論
古い家は、配線を先に確かめないと工事が増える場合があります。間取りの変更と電気配線は、費用と運営の両方に響きました。現地で、この2点を先に確かめます。
私たちの物件で分かったことと、その影響です。
配線は、ゲストに同時使用を控える案内を出して運用しました。3芯化の工事は費用がかかるため、早めに確かめて資金計画に入れておくのがよいと学びました。
約410万円改修工事3社を比較
約240万円家具・家電備品を含む
改修工事は3社の見積もりを比べ、見積額がいちばん低かった会社に発注しました。写真とビデオ通話で進み具合を共有してもらえた一方、工事完了・支払いのあとに想定外の追加請求があり、相談のうえ一部の支払いにとどめました。やりとりを文書で残すことと、構想を最初に言葉にして共有することが、学びになりました。
物件を借りたため、取得費はかかっていません。進め方の詳細は遠方からの改修工事の進め方にまとめています。
法令:営業できる家かどうかは、いつ、誰に確かめるのか?
結論
保健所と消防署へは、開業の2か月前に相談しておくと進めやすくなります。私たちは事前相談のうえ自分で申請し、許可が出るまで、申請から1〜2か月かかりました。
選んだ制度は、旅館業法の簡易宿所(小規模な宿として営業できる区分)です。民泊新法(住宅宿泊事業法。家を宿として貸すための法律)の営業日数の上限(年180日)を避け、通年で営業するためでした。
簡易宿所(旅館業)
営業日数通年で営業
手続き許可
※2026年10月時点。制度の違いは民泊新法と旅館業の違いで解説しています。
私たちの許可までの流れは、次のとおりです。
- 開業の2か月前に、保健所と消防署へ事前相談する。
- 自分で申請する。
- 申請から1〜2か月で、許可が出る。
- 許可番号を得てはじめて、Airbnb で予約を受けられる。
許可番号がないと予約を受けられないため、相談から許可までの期間は、開業日から逆算して見ておく必要があります。
営業できるかどうかは、次の3点が物件や自治体で異なります。
- 用途地域(その土地に建てられる建物の種類を決めた、まちづくりのルール)
- 自治体の条例
- 消防の基準
契約の前に、保健所と消防署に確かめておくほうが安全だと考えます。
運営:遠くから回せる形にできるのか?
運営を仕組みにすれば、現地に行くのは数か月に1回ほどで済む場合があります。遠く離れた物件(開業のころは車で片道約2時間、いまは東京から)でも、清掃・鍵・問い合わせを仕組みにして、数か月に1回ほどになりました。
清掃近隣の人に依頼
近隣の個人事業主・複業人材に依頼。手順書を作り、一緒に清掃して、完了後は写真で確認。開業2か月目には自分が行かなくても回りました。
鍵セルフチェックイン
スマートロック(暗証番号などで開く電子錠)で受け渡し。長期滞在を前提にして、清掃の回数も抑えました。
問い合わせ定型文とFAQ
Airbnb の自動翻訳と日英の定型文に加え、過去の質問をまとめたFAQを読み込ませたAIチャットボットを使いました。
準備回線と近隣
Wi-Fi の工事は繁忙期で2か月以上かかり、据え置き型のホームルーターでしのぎました。工事車両の駐車では近隣から指摘を受けました。
横にスワイプで続きを見られます
月々の運営費の内訳を見る
- 家賃:5万円
- 清掃委託:2万円
- 予約サイトの手数料などのシステム利用料:8万円
- 光熱水費・Wi-Fi・消耗品:3万円
- 合計:18万円(開業から3か月の試運転期間の資料の値)
※ この運営費は、本格稼働前の試運転期間の値です。
稼働後の数字は賃貸の一軒家を宿にした1年目の記事にあります。
この家が向くか、自分で判断する手順は?
私たちが実際に踏んだ順番を、確認の手順として並べます。
- 泊まってほしい人を一つに絞る。私たちは、外国人の長期滞在者でした。
- その人が、歩いて食事や買い物をできるか確かめる。私たちの物件は、駅から徒歩10分ほどで、飲食店・コンビニ・スーパーが徒歩圏でした。
- 古い家なら、電気配線の方式と、同時に使う家電を確かめる。私たちは二芯配線で、エアコン・冷蔵庫・電子レンジに制約が出ました。
- 改修の見積もりを複数社から取り、追加請求に備えて、やりとりを文書で残す。私たちは3社を比べました。
- 保健所と消防署に事前相談する。私たちは開業の2か月前で、許可まで1〜2か月でした。
- 清掃・鍵・問い合わせを、現地に行かずに回せるか考える。私たちは清掃を近隣の個人事業主に外注し、鍵はスマートロック、問い合わせは定型文とFAQで対応して、現地に行くのは数か月に1回ほどです。
※ 1件の経験にもとづく目安です。物件ごとに結果は変わります。
6つのうち、配線の3芯化のように費用がかかるものは、資金計画に入れて判断します。迷うときは、物件の状態と立地を見たうえで収支を試算してもらう方法もあります。
まとめ:4つの視点は、実際に確かめた結果で判断する
立地・建物・法令・運営の4つは、「泊まる人が歩いて暮らせるか」「配線と間取りの費用」「許可までの期間」「現地に行かずに回せるか」で確かめられます。私たちは、駅徒歩10分の賃貸物件で、約7か月かけて開業しました。
向いていない場合は、売る・貸す・解体して土地を売る・持ち続ける、といった別の道を比べることもできます。比べ方は空き家の活用方法を比べる記事にまとめています。RIVIA&CO.の空き家再生事業では、物件の見極めから相談を受けています。
よくある質問
Q駅から遠い家でも宿にできますか?
A駅からの距離だけでは決まりません。私たちの物件は駅から徒歩10分ほどで、見たのは泊まる人が歩いて食事や買い物をできるかでした。車での旅行が中心の地域では、駐車場の有無や周辺の宿の稼働を調べて判断します。
Q古い家の電気配線は、宿にするときに問題になりますか?
A私たちの物件は二芯配線(単相2線式)で、エアコン・冷蔵庫・電子レンジの同時使用に制約が出ました。ゲストへの案内で運用しましたが、3芯化の工事は費用がかかるため、早めに確かめて資金計画に入れるのがよいと学びました。
Q民泊新法と簡易宿所は、どちらで始めましたか?
A旅館業法の簡易宿所の許可を取りました。民泊新法の年180日の制限を避け、通年で営業するためです。どちらが合うかは物件や目的で変わるため、保健所や自治体に確認してください。
Q向いていないと分かった場合は?
A売る、貸す、解体して土地を売る、持ち続ける、といった道と並べて比べます。売るなら3,000万円特別控除の条件、解体なら自治体の補助の対象条件など、道ごとの分かれ目は、記事「空き家の活用方法を比べる」にまとめています。
参考資料(3件)
- 観光庁「民泊制度ポータルサイト」
- 厚生労働省「旅館業法について」
- 創業メンバーによる下田市での宿の開業記録(2025年11月執筆・個人事業としての開業)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。