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民泊の価格設定で失敗した事例|ほぼ満室でも赤字から、単価1.9倍で立て直すまで

こんな方に
ほぼ満室でも赤字。単価1.9倍で立て直した事例

民泊を開業して最初にぶつかりやすいのが、価格設定です。この事例のAさんは、1泊25,000円で出して予約ゼロ、9,800円まで下げて稼働率92%でも利益が残らない、という二重の失敗を経験しました。

この記事のポイント

  • ほぼ満室でも利益が残らないことがある、と先に知っておけます。稼働率92%でも、清掃が月25回以上かかり、実質赤字でした。
  • 開業直後は、レビューを集める期間と、利益を出す期間を分けます。最初から1泊25,000円で出すと、最初の2週間は予約ゼロでした。
  • 単価を戻し、週末などに最低2泊を設けると、売上が増えて清掃が減りました。単価は9,800円から18,500円(約1.9倍)、月の売上は約27万円から約32万円、清掃は月7回前後です。

事例の概要(取材時期:2025年9月〜12月)

民泊を開業して最初にぶつかりやすいのが、価格設定です。この事例のAさんは、1泊25,000円で出して予約ゼロ、9,800円まで下げて稼働率(部屋が埋まっている割合)92%でも利益が残らない、という二重の失敗を経験しました。そこから単価を18,500円まで戻し、稼働率を58%に落としたところ、月間売上は約27万円から約32万円に増え、清掃は月25回以上から月7回前後に減りました。開業1〜3か月目に何が起きたのかを、数字と本人の言葉で整理します。

営業形態旅館業許可(宿泊業を営むための許可)を取得し、通年営業

取材対象Aさん

テーマ開業1〜3か月目の価格設定の失敗と立て直し

使った手段ダイナミックプライシングツール(需要に合わせて価格を自動で変える仕組み)、最低宿泊数の設定、レビュー獲得期の価格設定

価格と稼働率はどう変わった?開業直後から3か月目までの数字

時期ADR(1泊の平均単価)稼働率結果
開業直後(最初の2週間)25,000円予約0件予約ゼロ
値下げ後(安売り期)9,800円92%月間売上は約27万円。清掃は月25回以上で、利益はほぼゼロ(微赤字)
開業3か月目(改善後)18,500円58%(月約17日稼働)月間売上は約32万円。清掃は月7回前後で、黒字を確保

稼働率は92%から58%へ、意図的に34ポイント下げました。それでも売上が増えたのは、単価が約1.9倍になったからです。清掃は月25回以上から月7回前後に減り、Aさんは「毎日満室にして疲弊する」状態から抜け出せたと話しています。

Aさんは、開業からの3か月をどう乗り越えたのか?

まず、開業直後の予約状況や価格設定について教えてください。

Aさん

オープン直後は完全に大失敗から始まりました(笑)。近隣の競合物件をリサーチして、「うちの方が内装もおしゃれだし、広さもあるから」と思って、周辺相場よりも少し高めの1泊25,000円で、Airbnbなどの予約サイトに掲載したんです。でも、最初の2週間、予約が1件も入りませんでした。

レビューがまだないオープン直後だと、相場通りでも厳しいことがありますよね。

Aさん

そうなんです。実績(レビュー)がない状態で高額設定にしても、ゲストからすればリスクでしかないんですよね。

開業直後の物件にはレビューがなく、ゲストは写真と価格だけで判断します。内装や広さに自信があっても、実績がないうちは、相場より高い価格が選ばれにくくなります。

9,800円に下げて稼働率92%。それでも「満室なのに赤字」だった理由

予約ゼロから、どう動いたのですか?

Aさん

焦った私は、真逆の極端な行動に出てしまいました。とにかく予約を埋めなきゃと思って、1泊9,800円まで一気に値下げしたんです。一瞬でカレンダーが埋まって、稼働率は92%を超えました。「よし、これで順調だ!」と喜んだんですが、すぐに現実を知りました。清掃費やリネン代、光熱費、予約サイトの手数料を引くと、働けば働くほど利益が残らない、むしろ実質赤字のような状態になってしまったんです。

1泊の売上が小さいと、清掃やリネンなど「1回の宿泊ごとにかかる費用」の割合が重くなります。9,800円の宿泊を月25回以上こなす運営では、清掃とゲスト対応に追われる一方で、手元にはほとんど残りません。Aさんはこの時期を、のちに「毎日満室にして疲弊する」状態だったと振り返っています。

Aさん

「満室=成功」ではなく、「いくらで何日売るか」を考えないと、民泊事業として成り立たないと痛感しました。

収益性を変えた3つの工夫

稼働率だけを追うと行き詰まる、というのは開業初期によくあることですね。どう立て直したのですか?

Aさん

「勘や感情で値付けをするのをやめよう」と決意して、3つの改善を行いました。

1. 「レビュー獲得期」と「収益化期」を分ける

最初の10件のレビューが集まるまでは、目標利益を低めに設定して、少し低めの「レビュー獲得価格」に割り切りました。そして、レビューが★4.8以上(予約サイトの5段階評価)で10件溜まった段階で、一気に適正価格まで戻すというロードマップを作りました。

2. ダイナミックプライシングツールを導入する

手動で周辺イベントや季節変動を調べて価格を変えるのは、限界がありました。そこでダイナミックプライシングツールを導入し、競合の予約状況・地域のイベント需要・曜日変動に合わせて、価格が自動で調整されるようにしました。「連休前は強気」「平日で日が近い空室は自動で値下げ」といったルールを、自動化したんです。

3. 最低宿泊数を設ける(最低2泊〜)

清掃コストと対応負担を減らすために、週末やハイシーズンは「最低2泊以上」の制限を設けました。これにより客単価が上がり、清掃回数が減って、利益が残るようになりました。

※ 利益額は取材では確認していません。

結果:稼働率を落としても、売上は増え、清掃は月7回前後に

改善後、数字にはどんな変化がありましたか?

Aさん

開業3か月目には、数値のバランスが劇的に改善しました。稼働率は、意図的に90%超から58%(月約17日稼働)まで落としました。それでも、単価が約1.9倍になったことで、月間売上はむしろアップして、清掃回数は月25回以上から月7回前後へと激減しました。「毎日満室にして疲弊する」状態から、「しっかり単価を取って、連泊で清掃コストを抑えながら利益を出す」という持続可能なモデルに転換できたのが、一番の収穫です。

失敗から何を学べるか?指標の見方と確認ポイント

  1. レビューがないのに、競合より高く設定した。 結果は、最初の2週間の予約ゼロでした。内装や広さへの自信より、レビューという実績が先に求められました。
  2. 焦って、稼働率だけを目標に値下げした。 稼働率は92%まで上がりましたが、清掃やリネン、手数料を引くと利益が残りませんでした。
  3. 感情と勘で価格を決めていた。 予約ゼロの焦りで極端に値下げしたことが、疲弊につながりました。ツールとルールで価格を動かす形に変えて、立て直しました。

解説:ADR・稼働率・RevPARの見方

  • ADR=宿泊売上÷販売した客室数(1泊あたりの平均単価)
  • 稼働率(OCC)=販売した客室数÷販売可能な客室数
  • RevPAR=ADR×稼働率(販売可能な1室あたりの売上)

この事例の数字から計算すると、RevPARは値下げ後が約9,000円(9,800円×92%)、改善後が約10,700円(18,500円×58%)で、約19%上がっています。稼働率を34ポイント下げても、単価を戻したことでRevPARは改善しました。稼働率だけでなく、単価との掛け算で見ます。そのうえで、清掃費や手数料などのコストも含めて判断しましょう。

開業直後の価格設定で確認したい5つのポイント

  • 周辺の競合と、レビュー数・評価を比べているか
  • 最初の10件のレビューを集めるまでの価格と、その後の目標価格を決めているか
  • 稼働率だけでなく、RevPARと、1泊あたりのコスト(清掃・リネン・手数料)を見ているか
  • 連休やイベント、曜日で価格を動かすルールがあるか
  • 清掃回数を減らす手段(最低宿泊数の設定など)を検討しているか

Aさんが、これから開業する人に伝えたいことは?

Aさん

開業直後は、予約が入らない恐怖から「値下げ」に走りがちです。でも、安売りは自分の首を絞めることになります。まずは「最初の10件のレビューを集めるための戦略的プライシング」と割り切り、その後はツールなどを活用して、データに基づいた価格設定を行ってみてください。適正価格で販売できれば、心にも運営体制にも余裕が生まれて、より良い体験をゲストに提供できるようになりますよ。

この事例の取材について

  • 取材時期:2025年9月〜12月。数字は取材時点のオーナー本人の申告です。
  • 掲載の許諾を得ており、お名前は匿名(Aさん)にしています。
  • 数字は取材時点のものです。現在の数字とは異なる場合があります
  • 本記事は個人の事例であり、収益を保証するものではありません。制度や基準は変わるため、最新の情報は各窓口でご確認ください。

ほかの事例は「民泊オーナーの事例」から読めます。関連して、「稼働率・客室単価・RevPARとは?」も参考になります。

※ 純利益は、オーナーの申告にもとづく、売上から費用を引いた額です。オーナー自身の作業時間や所得税などを含むかは、取材では確認していません。

物件や資金の進め方に迷っているときは、無料で相談できます。

よくある質問

Q民泊の適正な価格は、どう決めればよいですか?
A

この事例では、周辺相場を見るだけでなく、レビューの有無で価格を分けました。最初の10件のレビューが集まるまでは低めの価格、★4.8以上で10件溜まったら適正価格に戻す、という順番です。

Q稼働率は高いほどよいのですか?
A

そうとは限りません。この事例では、稼働率92%でも実質赤字で、稼働率58%の方が売上も利益も改善しました。稼働率は、単価やコストと合わせて見る必要があります。

Qダイナミックプライシングツールとは何ですか?
A

競合の予約状況、地域のイベント、曜日や季節などに合わせて、宿泊価格を自動で調整するツールです。この事例では、連休前は高め、日が近い平日の空室は低めに、といったルールを自動化しました。

Q最低宿泊数を設けると、予約が減りませんか?
A

この事例では、単価の見直しと合わせて、週末やハイシーズンに最低2泊を設け、稼働率は58%になりました。それでも、単価が上がって清掃回数が減り、利益が残るようになりました。※ 利益額は取材では確認していません。物件のエリアや客層によって結果は変わります。

参考資料(1件)
  • 民泊オーナーへの取材(2025年9月〜12月)。数字はオーナー本人の申告にもとづく

※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。

この記事を書いた人

アキヤド編集部

合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。

石原 佑真の写真

この記事の監修者

石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員

株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。

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