下田の賃貸一軒家を民泊に|約14か月で家具・家電の投資をほぼ回収
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
伊豆・下田で、創業メンバーが個人事業として始めた一棟貸し(建物まるごと貸す形)の宿の運営データです。初期投資の内訳、1年目の計画と実績、2年目の伸び、費用の割合、投資を回収するまでの期間を、割合を中心に紹介します。
この記事のポイント
- 初期投資を約14か月でほぼ回収できた例があります。開業から約14か月で、初期投資の約98%を回収しました。下田エリア(静岡県・伊豆半島)の賃貸の一軒家を、旅館業の許可(宿として営業するための許可)を取って一棟貸しの宿にした例です。家具・家電・設備工事などの初期投資を、営業利益(売上から費用を引いた残り)で回収しました。
- 稼働率は、計画より高くなった例があります。1年目の稼働率は約53%で、計画の1.3倍でした。稼働率は部屋が埋まっている割合で、計画は約40%。対象は2025年7月中旬〜2026年3月の約8.5か月分で、売上は計画の約1.6倍でした。
- 2年目は、料金を上げながら売上を伸ばせた例があります。上半期は、客室単価が約40%伸びました。RevPAR(販売できる1室あたりの1日の売上)は約74%の伸びです。どちらも1年目の平均との比較で、客室単価は1室1泊の料金です。
- 冬の閑散期や備品の買い替えが重なる月は、赤字になりやすくなります。費用は、予約サイトの手数料が売上の約15%、清掃が約16%でした。清掃は委託で、数字は1年目のものです。
どんな宿か
※ 本記事の数値は、創業メンバーが個人事業として運営を始めた宿(下田の一棟貸し・運営施設の一例)の実績をもとにしています。宿の詳しい所在地は載せていません。金額は割合を中心に載せています。
開業前に何をしたのか?準備は約7か月
この宿は、創業メンバーが宿泊業・民泊の経験がない会社員として、約7か月かけて準備しました。開業は会社設立(2026年9月)より前で、個人事業として始めたものです。
- 許可:旅館業法の簡易宿所(小規模な宿として営業できる区分)として許可を取得(通年営業のため)。保健所と消防署に開業の2か月前に事前相談し、自分で申請しました。申請から許可まで1〜2か月で、許可番号がないと Airbnb(民泊の予約サイト)で予約を受けられません。
- 資金:日本政策金融公庫の融資200万円、自治体の補助金50万円、残りは自己資金。法人名義の融資相談は経験がないことを理由に見送られ、個人名義で決まりました。
- 補助金:要項に「市内の工務店との契約」が求められており、相見積もりの結果と照らして判断しました。補助金ありきの計画にはしていません。
- つまずいた点:古い配線(単相2線式。一度に使える電気の量が限られる)でエアコン・冷蔵庫・電子レンジを同時に使えず、ゲストに案内して運用しました。Wi-Fi 工事は申し込みから2か月以上かかり、ホームルーターでしのぎました。
※ 開業記録(創業メンバー本人の執筆)にもとづく要約です。
※ 融資の可否は審査によります。
初期投資は何にいくらかかったのか?
開業前に購入した家具・家電・設備工事などを100としたときの内訳です。物件を所有せず借りて始めたため、建物の取得費はかかっていません。
初期投資の内訳(全体を100としたとき)
- 家電約44%エアコン・冷蔵庫・洗濯機・ガス衣類乾燥機など
- 家具約15%
- 設備工事約13%電気工事
- 寝具約9%
- 写真・ロゴ・看板約6%
- 鍵・チェックイン・防犯約5%
- その他約8%キッチン用品・リネン・消防用品など
※初期費用は、開業記録では改修工事 約410万円+家具・家電・備品 約240万円と整理されています。この記事の「初期投資」は、運営データ上の開業前の購入費(家具・家電・設備工事など)を100とした指数で、改修工事費の扱いは異なる場合があります。「初期投資の約98%を回収」も、この指数に対する割合として読んでください。
単品で最も大きかったのは、ガス衣類乾燥機です。シーツやタオルを短時間で乾かせるため、チェックアウトから次のチェックインまでの準備が早くなり、連日の予約を受けやすくなります。
資金の集め方は、「小さな宿の開業資金はどう用意する?」で説明しています。
初期投資は、何か月でほぼ回収できたのか?
初期投資は、約14か月でほぼ回収できました。開業前の準備期間の家賃も含めて、毎月の営業利益を積み上げると、開業から約14か月(2026年9月)の時点で、初期投資の約98%を回収できています。
一方で、1年目の1月のように、閑散期に備品の買い替えが重なった月は赤字になっています。年間を通して見れば利益が出ていても、月ごとの波と、まとまった買い替えに備えた資金は確保しておく必要があります。
回収を支えた稼働率と単価、費用の中身は、このあとの節で順に見ます。不動産としての見方は、「不動産投資として見る小さな宿・民泊」で説明しています。
1年目は計画をどこまで上回ったのか?
1年目の稼働率は約53%で、計画の1.3倍になりました。開業前に、季節を「ハイ・ミドル・ロー・オフ」の4段階に分けて、料金と稼働の計画を立てました。結果は次のとおりです。
※ ここでいう1年目は、2025年7月中旬〜2026年3月の約8.5か月分で、12か月分ではありません。
月ごとの稼働率には、はっきりとした波がありました。夏(8〜9月)・12月・3月は6割前後から7割台、11月や1月は3割台にとどまっています。
※ 表は開業月の7月を除く、8月〜3月の8か月分です。
2年目は何が伸びたのか?
2年目は、料金を上げながら売上を伸ばせました。上半期(2026年4〜9月)は、稼働率を保ちながら、客室単価が大きく上がっています。1年目の平均を100としたときの比較です。
月別に見ると、5〜6月は稼働率が80%前後と高く、7〜9月は稼働率が4〜6割台でも、客室単価が1年目の平均の1.7〜2.2倍になりました。混む時期は単価を上げ、空きやすい時期は稼働を優先するという、季節に合わせた料金の差が売上を押し上げています。料金の考え方は、稼働率・客室単価・RevPARの記事で詳しく解説しています。
費用は売上の何割を占めるのか?
冬の閑散期や備品の買い替えが重なる月は、赤字になりやすくなります。費用は、予約サイトの手数料が売上の約15%、清掃の委託が約16%(1年目)でした。売上を100としたときの、主な費用の割合です。
家賃は毎月一定のため、売上が伸びるほど割合が下がります。2年目の上半期は、清掃を自社で行ったため委託費がかからず、営業利益率(売上に対する営業利益の割合)は約67%でした。
※ 自社で清掃した分の人件費は、この計算に含めていません。
まとめ:この事例から分かること
- 借りて始めれば、初期投資は「家具・家電・設備」が中心:物件を買わない分、回収までの期間を短くしやすくなります。ただし、転貸(借りた家を宿として又貸しすること)には所有者の承諾が必要です。
- 計画は季節ごとに立てる:繁閑を4段階に分けて計画したことで、実績とのずれを月ごとに確認できました。
- 2年目は単価で伸びる:レビューが積み上がると、同じ稼働率でも単価を上げやすくなります。
- 運営の効率化に投資する:乾燥機・スマートキー・チェックインシステムは、清掃や受け付けの手間を減らし、少人数での運営を支えます。
小さな宿は、物件・料金・運営の工夫しだいで、比較的短い期間で初期投資を回収できる可能性があります。一方で、季節による波や、まとまった出費が出る月もあります。季節ごとの計画を立て、実績と比べながら料金と運営を見直していくことが、安定した運営への近道です。
物件の条件に合わせた収支の見通しづくりは、アキヤドでもお手伝いしています。
よくある質問
Q賃貸の物件でも宿として運営できますか?
A所有者の承諾があれば可能です。賃貸借契約で、宿泊施設として使うこと(転貸)を認めてもらう必要があります。あわせて、用途地域(土地に建てられる建物の種類を決めたルール)や建物の基準など、旅館業や民泊の法令も確認しましょう。
Qどのくらいの期間で初期投資を回収できますか?
A物件・立地・料金・運営の方法によって大きく異なります。この事例では、物件を借りて始めたことで初期投資が家具・家電・設備に限られ、約14か月でほぼ回収できました。
Q冬の閑散期はどうしていますか?
A稼働を優先した料金に下げたり、連泊の割引を設けたりします。同時に、閑散期は設備の点検や備品の入れ替えにあてる時期と考えて、資金計画に組み込んでおくことが大切です。
Founder's story
会社員が片道2時間の下田で、民泊を始めた記録
合同会社RIVIA&CO.の代表社員の片井が、はじめて民泊に挑戦したときの体験記です。開業までのリアルと、開業後3か月の歩みをnoteにまとめています。
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参考資料(3件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。