稼働率・客室単価・RevPARとは?民泊・小さな宿の売上を読む3つの指標
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
稼働率・客室単価・RevPAR(空き部屋も含めた1室あたりの1日の売上)の意味と計算を、下田の宿の実データで解説。全国平均29.6%との比べ方や、値下げで利益が減る理由も紹介します。
この記事のポイント
- RevPARを見ると、宿の売上の伸びを1つの数字で追えます。RevPAR(空き部屋も含めた1室あたりの1日の売上)は、稼働率×客室単価で出ます。
- 稼働率が3割弱でも、全国平均並みです。2025年の簡易宿所(旅館業の許可の種類のひとつ)の稼働率は、全国平均で29.6%。10日のうち約3日しか埋まっていません。下田の宿の1年目は約53%でした。
- 2年目は、稼働率と料金の両方を上げると売上が伸びやすくなります。私たちの宿の2年目上半期は、RevPARが1年目の約1.74倍。部屋が埋まる割合が約1.25倍、1泊の料金が約1.4倍でした。
- 予約が増えるほど、手数料と清掃の費用も増えます。予約サイトの手数料は売上の約14〜15%、清掃の委託は1年目で約16%でした。泊数が増えるほど増える費用です。
宿の売上は、何と何の掛け算で決まる?
RevPAR(空き部屋も含めた1室あたりの1日の売上)を見ると、宿の売上の伸びを1つの数字で追えます。宿の売上は稼働率と客室単価の掛け算で決まり、その結果がRevPARです。
宿の売上を読み解く3つの指標
RevPAR販売できる1日あたりの売上=稼働率販売できた日のうち、埋まった割合×客室単価(ADR)1泊あたりの平均料金
稼働率だけ、単価だけではなく、両方をかけたRevPARで売上の効率を見ます。
一棟貸しの宿は、1棟を1室として数えます。実際の数字で確かめます。創業メンバーが開いた宿の、開業から最初の3か月(本格稼働前の試運転期間)は、次のとおりです。
※ 3か月を約90日として計算した概算です。試運転期間の値で、本格稼働後の数字ではありません。
RevPARは、月ごとの比較や、他の宿との比較に使いやすい指標です。
稼働率は何%あれば良い?全国の簡易宿所と私たちの宿を並べる
稼働率が3割弱でも、簡易宿所の全国平均並みです。一律の目標はありませんが、比べる目安はあります。2025年の簡易宿所(旅館業の許可の種類のひとつ。客室を共用する造りも含み、小さな宿が多い)の客室稼働率は、全国平均が29.6%でした。私たちの宿の1年目は約53%です。
29.6%全国平均簡易宿所・2025年
24.6%静岡県簡易宿所・2025年
約53%私たちの宿1年目の平均
※ 全国・静岡県は観光庁「宿泊旅行統計調査」(2025年・年間値の確定値)の簡易宿所の客室稼働率です。全施設の平均は全国61.6%、静岡県56.0%でした。私たちの宿の1年目は、2025年7月中旬〜2026年3月の約8.5か月分です。
自分の宿の数字が全国の簡易宿所の平均より上か下かを見る、目安として使ってください。
※ 統計は、立地も規模も違う施設の平均です。観光で選ばれやすい立地の一棟貸しである私たちの宿と、そのまま比べられるわけではありません。
もう一つ見たいのは、月ごとの波です。私たちの宿の1年目は、同じ宿でも月によって稼働率が33%から71%まで動きました(開業月の7月を除く)。
年間の平均だけを見ると、11月や1月のような谷を見落とします。月ごとに見るから、谷の月に料金や最低滞在日数を調整できます。
RevPARが伸びたのは、稼働率のおかげ?単価のおかげ?
2年目は、稼働率と料金の両方を上げると売上が伸びやすくなります。私たちの宿では、客室単価の伸びが大きく効きました。2年目の上半期(2026年4〜9月)はRevPARが1年目の平均の約1.74倍で、その内訳は、稼働率が約1.25倍、客室単価が約1.4倍です。
※ 客室単価とRevPARは、1年目の平均を100とした指数です。稼働率の倍率は66÷53で、RevPARの倍率はその倍率と客室単価の倍率を掛けた値(1.25×1.4)にほぼ一致します。
月別に見ると、5〜6月は稼働率が80%前後でした。7〜9月は稼働率が4〜6割台でしたが、客室単価は1年目の平均の1.7〜2.2倍になっています。混む時期は単価を上げ、空きやすい時期は稼働を優先した使い分けが、RevPARを押し上げました。
料金の決め方は、開業直後と後で変えました。開業直後は安めにしてレビューを集め、高評価が5件ほどたまってから段階的に上げています。週末・祝日・地域のイベントは上げ、閑散期は写真と説明文を更新し、最低滞在日数を調整して検索順位を保ちます。
季節の波への対応は、「閑散期をどう乗り越える?」で説明しています。
稼働率を上げるために値下げすると、利益はどうなる?
値下げして泊数を増やすと、売上が同じでも、手元に残るお金は減ることがあります。泊数が増えると増える費用があるからです。下の表は、私たちの宿の費用を「泊数で増えるもの」と「増えないもの」に分けて見るためのものです。
※ 私たちの宿の運営データです。2年目上半期は清掃を自社で行ったため、清掃の委託費はかかっていません。
この表を使って、売上が同じ54万円の2つの場合を比べます(仮の数字。1泊ごとの予約で、清掃は1泊につき1回、1回5,000円、予約サイトの手数料は売上の14%とします)。
※ 家賃・光熱費・備品などは含みません。仮の数字による試算で、実際の運営データではありません。
売上は同じでも、後者は清掃が9回多く、残る額が約4.5万円少なくなります。「稼働率が上がった」だけで安心せず、泊数が増えて増える費用を引いたあと、いくら残るかを見ます。
私たちの宿は、長期滞在とセルフチェックインを前提に、清掃の回数を抑える設計にしました。長期滞在には週割・月割を付けています。稼働率を上げる手段を、値下げだけにしないための工夫です。
赤字にならない稼働率の出し方は、「民泊は稼働率何%で黒字?損益分岐点を自分で計算するやり方」で説明しています。
取材したオーナーの例です。稼働率92%でも、清掃が月25回以上かかって実質赤字だったAさんは、単価を9,800円から18,500円に戻して稼働率を58%に落としたところ、月の売上が約27万円から約32万円に増え、清掃は月7回前後になりました(本人の申告)。詳しくは「民泊の価格設定で失敗|ほぼ満室でも赤字から、単価1.9倍で立て直した事例」で紹介しています。
まとめ:3つの数字を毎月同じ形で記録し、曜日・季節別に見る
稼働率・客室単価・RevPARは、毎月同じ形で記録して初めて使えます。変化から原因を考えて、価格と集客を調整します。
- 月末に、販売泊数と販売可能日数を記録する:稼働率が出ます。
- 客室売上を、泊数と日数で割る:客室単価とRevPARが出ます。
- 曜日・季節ごとに分ける:週末は値上げ、平日は連泊割引、といった打ち手が見えます。
- 先々の予約の入り方を見る:早く埋まる日は値上げし、直前まで空く日は調整します。
周辺の似た宿の料金も、価格が適正かを判断する材料になります。集客チャネルの使い分けは、「予約サイトと自社予約、どう使い分ける?」で説明しています。
収益の試算のしかたは、「AirDNAで小規模宿の収益をシミュレーション」で紹介しています。
よくある質問
Q稼働率はどのくらいあれば良いですか?
A立地・季節・宿の種類で大きく異なり、一律の目安はありません。参考値として、2025年の簡易宿所の客室稼働率は全国平均が29.6%、静岡県が24.6%でした(観光庁)。収支が合う稼働率から逆算して、目標を決める方法もあります。
Q一棟貸しでもRevPARは使えますか?
A使えます。一棟を1室とみなし、月の売上を日数で割れば、1日あたりの売上力として比較できます。
Q料金はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
A少なくとも月に一度は、先々の予約状況を見ながら見直します。私たちの宿では、開業直後は安めに設定し、高評価のレビューが5件ほどたまってから段階的に上げました。
参考資料(4件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。