観光と地域

長期滞在の旅が広がる理由と民泊|ワーケーション・二地域居住

こんな方に
「暮らすように旅する」長期滞在が広がる理由

長期滞在が広がる背景を、国の観光計画の数字と、下田で欧米の長期滞在者を迎えた宿の設備・運営から解説します。ワーケーションや二地域居住の位置づけ、揃えたい設備、連泊が運営に与える影響を紹介します。

この記事のポイント

  • 長く泊まる客を迎える宿は、国の観光計画でも重視されています。2026年3月の国の観光計画は、長期滞在を施策に挙げました。ワーケーション、二地域居住、デジタルノマドの誘客が対象です。
  • 地方の宿には、連泊してもらう余地がまだ残っています。訪日客の地方部での宿泊は、1人あたり1.4泊です。2025年の実績で、目標の2泊には届いていません。
  • 長く泊まる客には、洗濯機や仕事机を揃えて迎えます。下田の宿は、欧米を中心とした長期滞在者向けに、洗濯機と乾燥機、調理器具、ワークデスクを用意しています。
  • 連泊が増えると、運営の手間を減らせる場合があります。清掃とチェックインの回数が減ります。私たちの宿で現地に行くのは数か月に1回ほどです。

長期滞在は、国の観光計画でどう位置づけられている?

長く泊まる客を迎える宿は、国の観光計画でも重視されています。2026年3月27日に閣議決定された「観光立国推進基本計画(第5次)」は、地方誘客の施策に、周遊・長期滞在の促進を入れました。ワーケーション、二地域居住、デジタルノマドの誘客も、施策に挙がっています。

  • ワーケーション:関係人口の創出や地域活性化に役立つ取組として推進します。
  • 二地域居住:関係人口を二地域居住へ広げます。滞在施設などの環境整備と、地域と二地域居住者をつなぐ特定居住支援法人の育成・確保を挙げています。
  • デジタルノマド:国際的なリモートワーカーを呼び込む在留資格が2024年3月に創設されました。計画は、長期滞在による地域消費の拡大が期待されるとして、長期滞在に適した受け入れ環境の整備を挙げています。

地方の宿には、連泊してもらう余地がまだ残っています。数字にもはっきり出ています。

1.4泊実績1人あたり・2025年
2泊目標2025年まで

訪日外国人旅行者1人あたりの地方部(三大都市圏以外)での宿泊数は、2025年に1.4泊で、目標の2泊の約7割でした。計画は、地方部での滞在期間が延びなかったことを、目標に届かなかった要因に挙げています。

地方まで来ても、短い滞在で次の地域へ移る旅行者が少なくない、と私たちは見ています。長く泊まる理由を用意できる宿が、この差を埋める受け皿になると考えます。

※ 観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」(2026年3月27日閣議決定)にもとづきます。2025年の宿泊数は速報値です。

長期滞在の客は、宿に何を求める?下田で評価された設備

長く泊まる客には、洗濯機や仕事机など、暮らせる設備と働ける環境を揃えて迎えます。創業メンバーが開いた宿は、欧米を中心とした外国人の長期滞在者(ノマドワーカー)を想定して設備を決めました。

求められるもの私たちの宿の例
洗濯・乾燥洗濯機と乾燥機を備えた。レビューで評価された
自炊調理器具を充実させた。ベジタリアンなど、自炊したいゲスト向け。レビューで評価された
睡眠と仕事マットレスとワークデスクに投資し、小物はコストを抑えた
インターネットWi-Fi の工事は繁忙期で、申し込みから2か月以上かかった。据え置き型のホームルーターでしのいだ
地域のお店駅から徒歩10分ほど。飲食店・コンビニ・スーパーが徒歩圏にある

ゲストは、インバウンド(訪日客)が中心です。ワーケーション目的の人や、下田ではサーフィン目的の人もいます。夏は長期滞在が多めです。

数泊したゲストのレビュー(2026年1月)には、次の言葉があります。

ゲストのレビュー

「海も近く初日の出も見ることができ、スーパーも近かったのでとても便利で快適な時間を過ごすことができました!」

設備を決めるときの考え方は、「長期滞在・海外のゲストに選ばれる設備と備品」で説明しています。

連泊が増えると、運営はどう変わる?

連泊が増えると、運営の手間を減らせる場合があります。清掃とチェックインの回数が減り、遠方からでも回しやすくなります。一方で、割引で客室単価が下がるため、日数と単価の両方を見る必要があります。

私たちの宿は、長期滞在とセルフチェックインを前提に、清掃の回数を抑える設計にしました。長期滞在には週割・月割を付けています。清掃は近隣の個人事業主・複業人材に委託し、手順書を作って現地で一緒に清掃したうえで、完了後は写真で品質を確認しました。開業2か月目には、自分が行かなくても回る体制になっています。

開業から3か月の試運転期間の資料では、清掃の委託は月2万円でした。スマートロックのセルフチェックイン、日英の定型文、AIチャットボットを合わせて、現地に行くのは数か月に1回ほどです。

※ 清掃委託の月2万円は運営費の一例で、物件や稼働により変わります。

割引で単価が下がる分は、清掃の回数が減る分と見合うかを、RevPARで確かめます。見方は「稼働率・客室単価・RevPARとは?」で説明しています。

民泊新法で受け入れる場合

住宅宿泊事業法の民泊は、宿泊させる日数が年180日以内です。長期滞在が中心になると、日数の上限に早く近づきます。通年で受け入れるなら、旅館業法の許可(簡易宿所など)を検討します。私たちの宿は、通年営業のために簡易宿所の許可を取りました。

閑散期への備えは、「閑散期をどう乗り越える?」で説明しています。

まとめ:「暮らせる宿」が、旅行者と地域をつなぐ

長期滞在の旅行者は、宿の外でも食事や買い物をします。駅から徒歩圏に飲食店やスーパーがある私たちの宿のように、暮らすように過ごせる宿は、地域の店に人の流れを生む拠点にもなります。

焼津市の鰯ヶ島で2026年末の開業を予定している宿も、同じ考え方です。食事を出さない泊食分離で町の食堂や魚屋を使ってもらい、デスクと高速Wi-Fiを備えて、数日から長期のワーケーションにも対応する計画です。

※ 計画段階の内容で、実績ではありません。

国の計画が地方での長期滞在を後押ししていても、旅行者が選ぶのは、洗濯、自炊、仕事、近所の店がそろう宿だと考えます。まずは設備と運営の負担を、連泊を前提に見直します。

訪日客数などの全体のデータは、「データで見る日本の観光市場」で紹介しています。

よくある質問

Q長期滞在向けの宿にするには、どんな準備が必要ですか?
A

私たちの宿では、洗濯機と乾燥機、調理器具、マットレスとワークデスクを優先して整えました。Wi-Fi の工事は、申し込みから2か月以上かかることがあるため、開業日程から逆算して早めに申し込みます。連泊の割引の設定や、近隣の店の案内も用意します。

Q民泊でも長期滞在を受け入れられますか?
A

受け入れられます。ただし、住宅宿泊事業法の民泊は宿泊させる日数が年180日以内です。長期滞在が中心になる場合は、日数の管理に注意するか、旅館業法の許可を検討します。

Q地方でも長期滞在の需要はありますか?
A

私たちの宿では、インバウンドのゲストが中心で、夏は長期滞在が多めです。国の計画も、地方での長期滞在を促進する方針です。ただし、訪日客の地方部での宿泊は1人あたり1.4泊(2025年)にとどまります。地域ごとの差があるため、周辺の宿の状況も確認してください。

参考資料(4件)

※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。

この記事を書いた人

アキヤド編集部

合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。

石原 佑真の写真

この記事の監修者

石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員

株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。

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