里山の古民家を民泊に|AirDNAのデータで融資を通した総予算350万円
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
中国地方の里山で、住む人がいなくなった古い農家住宅を借り受け、宿に再生したご夫婦の事例です。総予算は約350万円(自己資金100万円+公庫融資250万円)。過疎地の需要を、民泊のデータ分析ツール AirDNA で示して融資を通しました。
この記事のポイント
- 過疎の里山でも、一棟貸しの古民家には需要がありました。民泊のデータ分析ツール AirDNA で、周辺の宿の稼働率や単価を調べて確かめています。
- 日本政策金融公庫(国の金融機関。公庫)の面談は、データで越えました。競合の稼働率・平均単価・予約の傾向をグラフと表にして、事業計画書に付けています。
- お金は水回りに集中させました。お風呂・トイレ・キッチンはプロに任せ、梁や土間は残し、壁の補修は自分たちで行っています。
事例の概要(取材時期:2026年1月〜3月)
中国地方の里山で、住む人がいなくなった古い農家住宅を借り受け、宿に再生したIさんご夫婦の事例です。「過疎が進む里山で、本当に宿泊需要はあるのか」という融資の面談の壁を、民泊のデータ分析ツール「AirDNA」で調べた数字で越えました。データの使い方、お金をかけた場所と抑えた場所、いまの収支を、ご夫婦の言葉で紹介します。
営業形態旅館業許可(宿泊業を営むための許可)を取得
取材対象Iさんご夫婦(元・関西の都市部の会社員)
物件中国地方の里山(妻の実家がある地域)の、古い農家住宅(借り受け)
総予算約350万円(自己資金100万円+公庫融資250万円)
客層週末を静かに過ごしたいカップル、個人旅行者
特徴融資の面談に AirDNA の競合データを使った。体験プログラムは作らず「何もしない贅沢」に絞った
費用と収支は?総予算約350万円で、純利益は月15〜18万円
初期費用
自己資金100万円
日本政策金融公庫の創業融資250万円(返済は月約4万円)
合計(総予算)約350万円(大部分を水回りの全面改修に)
月の収支
月商(1か月の売上)約45万〜50万円
公庫の返済月約4万円
純利益月15万〜18万円
※ 純利益は、公庫の返済、維持費、光熱費、清掃委託費などを引いた、本人申告の額です。
※ 借りた家の家賃を引いているか、部屋数や客室単価、稼働率(部屋が埋まっている割合)は、取材では確認していません。
Iさんご夫婦は、なぜ里山の古い農家住宅を宿にしたのか?

Iさんご夫婦
関西の都市部で会社員をしていた私たちは、いつかは自然豊かな地方で暮らしたいという思いを抱いていました。そんな折、妻の実家がある中国地方の里山を訪れ、立派な梁や土間のある古い農家住宅が、住む人がいなくなってそのまま放置されているのを知りました。

Iさんご夫婦
「このまま朽ち果てさせてしまうのはあまりに勿体ない。私たちが借り受けて、この地域の魅力を伝える拠点にできないか」。それが、すべての始まりです。

Iさんご夫婦
大掛かりなリゾートホテルのようなものは作れません。だから、「昔ながらの日本の原風景や、里山の暮らしそのものを楽しんでもらう宿にしよう」と、夫婦で話し合って決めました。
過疎地の需要を、どうやってデータで示したのか?

Iさんご夫婦
初期コストを抑えるため、手元にあった自己資金100万円に加えて、日本政策金融公庫の創業融資で250万円を借り入れました。総額約350万円の予算です。
※ 創業融資は、これから事業を始める人向けの融資です。

Iさんご夫婦
一番苦労したのは、やはり公庫の融資面談でした。「過疎が進む里山エリアで、本当に年間を通して宿泊需要があるのか」と、担当者から当然のように厳しい目を向けられました。「里山のスローライフに特化します」という精神論だけでは、絶対に融資は通らない。そう考えて、事前に民泊のデータ分析ツールである「AirDNA」を活用しました。
調べたこと 1周辺の宿の稼働率
周辺エリアの競合施設が、どれくらい埋まっているか。
調べたこと 2平均の客室単価
似た宿が、1泊いくらで泊まられているか。
調べたこと 3予約の傾向
いつ、どんな予約が入っているか。
横にスワイプで続きを見られます

Iさんご夫婦
「この地域は全体的な観光客数は少なく見えますが、ポツンとある一棟貸しの古民家には、これだけの検索需要と稼働実績がある」。その客観的な数値をグラフや表にして、事業計画書に添付しました。すると担当者も、「ここまでデータが揃っているなら、事業として成立しますね」と納得してくれて、無事に融資を引き出すことができました。
地域全体の観光客数ではなく、自分と同じ形の宿(一棟貸しの古民家)の実績を見せたことが、説得の決め手になっています。AirDNA の使い方と、数字を見るときの注意点は「AirDNAで民泊の収益をシミュレーション」にまとめています。
※ AirDNA で見た実際の稼働率・単価の数字は、取材では確認していません。
総額350万円は、どこにかけて、どこを抑えたのか?

Iさんご夫婦
調達した資金の大部分は、古民家の水回りの全面改修に充てました。お風呂・トイレ・キッチンです。ここはプロの職人さんに入れてもらい、ゲストが不便を感じない、清潔な最新設備に入れ替えました。

Iさんご夫婦
逆に、立派な梁や土間などの味わい深い部分は、そのまま活かしました。壁の補修などは自分たちで行って、コストを調整しています。
※ 水回りの工事費の内訳と、壁の補修にかけた費用は、取材では確認していません。
なぜ「何もしない贅沢」が選ばれたのか?いまの収支は?

Iさんご夫婦
運営面では、大掛かりな体験プログラムなどは、あえて作りませんでした。「テレビも何もない静かな空間で、ただ読書をしたり、古民家の雰囲気を味わってボーッとしたりする、大人の隠れ家」。このコンセプトを、徹底したんです。

Iさんご夫婦
「都会の喧騒を離れて、何もしない贅沢を味わう」というスタイルが、週末を静かに過ごしたいカップルや個人旅行者にヒットしました。

Iさんご夫婦
月商は約45万〜50万円を、安定して記録しています。公庫への毎月約4万円の返済、維持費、光熱費、清掃委託費などをすべて引いても、毎月15万〜18万円ほどの純利益が手元に残る状態です。最初から感覚ではなく、データに基づいて綿密に事業計画を立てたおかげで、プレッシャーも少なく、手堅く経営できています。

Iさんご夫婦
近所の農家の方々も、「若い人が綺麗に使ってくれて嬉しいねぇ」と、毎日のように野菜をおすそ分けしてくれます。この里山での暮らしに、本当の意味での自信が持てるようになりました。
※ 曜日や季節ごとの予約の状況は、取材では確認していません。
里山の古民家で宿を始める前に、確認したいポイントは?
解説:データで需要を示すときのポイント
- 比べる相手をそろえる:地域全体の観光客数ではなく、自分と同じ形(一棟貸し・古民家など)の宿の稼働率と単価を見ます。
- 数字は表とグラフにする:この事例では、稼働率・平均単価・予約の傾向を、事業計画書に添付しました。
- ツールの数字は推計:AirDNA などの数字は、予約サイトの公開情報からの推計です。実際の売上とずれることがあるため、控えめに見積もります。
- 借りた家を融資で改修するなら:賃貸借(借りる契約)の期間が、融資の返済期間より短くならないかを確かめます。
始める前の確認リスト
- 自分と同じ形の宿の稼働率・単価を、データで調べたか
- 水回りの工事に、予算の多くを回す前提で見積もったか
- 梁・土間など、残して魅力になる部分を見極めたか
- 自分たちで手を動かせる工事と、プロに任せる工事を分けたか
- 許可の要件を、保健所・消防署に事前に相談したか
資金の組み合わせ方は「民泊・小さな宿の開業資金の用意のしかた」、古い家の改修は「古民家を民泊に改修するポイント」にまとめています。
この事例の取材について
この事例の取材について
- 取材時期:2026年1月〜3月。数字は取材時点のオーナー本人の申告です。
- 掲載の許諾を得ており、お名前は匿名にしています。
- 数字は取材時点のものです。現在の数字とは異なる場合があります
- 本記事は個人の事例であり、収益を保証するものではありません。制度や基準は変わるため、最新の情報は各窓口でご確認ください。
- 純利益は、オーナーの申告にもとづく、売上から費用を引いた額です。オーナー自身の作業時間や所得税などを含むかは、取材では確認していません。
物件や資金の進め方に迷っているときは、無料で相談できます。
よくある質問
Q過疎地でも、民泊の需要はありますか?
Aこの事例では、地域全体の観光客数は少なく見えても、一棟貸しの古民家には検索需要と稼働の実績がありました。立地や建物で変わるため、周辺の同じ形の宿の数字を調べて判断します。
QAirDNA のデータは、融資の面談で使えますか?
Aこの事例では、周辺の競合施設の稼働率・平均単価・予約の傾向をグラフと表にして事業計画書に添付し、融資を受けています。※ 審査は申込みごとに公庫が判断します。
Q古民家の改修で、どこにお金をかければよいですか?
Aこの事例では、お風呂・トイレ・キッチンの水回りにお金を集中させ、梁や土間はそのまま活かし、壁の補修は自分たちで行いました。
参考資料(2件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。