AirDNAで民泊の収益をシミュレーション|再現性を高める5つのコツ
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読了目安 約6分
執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
宿を始める前に、「その町で1年にいくら売れそうか」を調べられるデータサービスがAirDNAです。部屋の埋まり具合と1泊の値段から売上と利益を試算する手順、計算例、数字を信じすぎないコツを紹介します。
この記事のポイント
- 開業前に、その町の稼働率や部屋代の目安がつかめます。AirDNAは、宿の公開情報から地域の稼働率などを推計するデータサービスです。Airbnbなどに載っている情報を使い、稼働率(部屋が埋まっている割合)、1泊の平均の部屋代(ADR)、季節ごとの波を出します。
- 売上と手元に残る利益は、簡単な式で試算できます。年間売上は「ADR × 営業日数 × 稼働率」で試算します。そこから予約サイトの手数料・掃除代・運営費を引き、手元に残る利益と、投資額に対する利益の割合(利回り)を出します。
- AirDNAの数字を信じすぎると、収支が甘くなりやすくなります。数字はあくまで推計で、平均値をそのまま使うと甘くなりがちです。自社サイトなどの直接予約は入っていません。
- 3つの工夫で、試算の大きなぶれを減らせます。工夫は、似た条件の宿だけを比べる、悲観・標準・楽観の3パターンで計算する、開業直後の客足が少ない期間を見込む、です。何度やっても大きくぶれないことを再現性といいます。
AirDNAで、開業前に町の稼働率や部屋代の目安はつかめるのか
開業前に、その町の稼働率や部屋代の目安がつかめます。AirDNAは、Airbnbなどの予約サイトに掲載されている民泊・バケーションレンタルの公開情報をもとに、エリアごとの稼働率(部屋が埋まっている割合)、平均客室単価(ADR=1泊の平均の部屋代)、1室あたり売上、季節ごとの変動などを推計して提供しているデータサービスです。
小規模な宿の開業を検討するとき、「このエリアで宿をやったら、年間いくら売上が立つのか」は最も知りたい情報の一つです。ホテルのように業界統計が整っていない一棟貸しや民泊の市場では、AirDNAのような推計データが、勘に頼らず事業計画を立てるための出発点になります。
主に確認できる指標
稼働率(予約が入った日の割合)、ADR(1泊あたりの平均販売単価)、RevPAR(販売可能な1日あたりの売上)、エリア内の掲載件数の推移、月ごとの需要の波など。機能や料金は変わるため、利用時に公式サイトで確かめてください。
※ RIVIA&CO.はAirDNA社と提携関係はありません。本記事は一般的な活用方法を解説するものです。
売上と手元に残る利益は、どんな式で試算するのか
売上と手元に残る利益は、簡単な式で試算できます。小規模宿の収益シミュレーションは、次の3つの式で組み立てます。
収益シミュレーションの基本式
売上1年間=販売できる日数年間の営業日×稼働率埋まった日の割合×客室単価1泊あたりの料金
ここから予約サイトの手数料・清掃費・光熱費などを引いたものが、手元に残る利益です。
- 年間売上 = ADR × 営業日数 × 稼働率:旅館業(簡易宿所=小さな宿の許可区分)なら営業日数は最大365日、住宅宿泊事業法(民泊新法)なら年間180日が上限です。
- 手元に残る利益 = 年間売上 - 運営にかかる費用:販売手数料、清掃・リネン、水道光熱・通信、消耗品、運営委託費、保険・税金・修繕積立などを差し引きます。
- 利回り(投資額に対して1年で戻る利益の割合) = 手元に残る利益 ÷ 投資額:投資額は、物件の取得費と改修・家具家電などの初期費用の合計です。投資額を利益で割ると、おおよその回収年数も分かります。
AirDNAから得られるのは、主に1つ目の式のADRと稼働率です。費用の側は、物件と運営体制に合わせて自分で積み上げる必要があります。
【計算例】地方の一棟貸し(定員6名)の場合
ここでは、次の条件で試算してみます。数値はすべて説明のための仮定で、特定のエリアの実績ではありません。
このうえで、稼働率を3パターンに分けて計算した結果が次の表です。
※ 所得税・住民税、借入金の返済、大規模修繕は含みません。
同じ物件でも、悲観と楽観で稼働率が25ポイント違うと、回収年数は約6年変わります。「平均的な稼働率」を一つだけ置いた計画は危うい、ということです。
なお、同じ条件を民泊新法(年間180日上限)で運営する場合、仮に180日すべて埋まっても年間売上は450万円が上限です。制度の選択が売上の上限を決めます。試算の段階で織り込んでおきましょう。
稼働率や客室単価の意味は、「稼働率・客室単価・RevPARとは?」で説明しています。
実績の費用から赤字にならない稼働率を出す方法は、「民泊は稼働率何%で黒字?損益分岐点を自分で計算するやり方」で説明しています。
AirDNAの数字を信じすぎると、何が危ないのか
AirDNAの数字を信じすぎると、収支が甘くなりやすくなります。数字はあくまで推計で、平均値をそのまま使うと甘くなりがちです。自社サイトなどの直接予約は入っていません。限界は次の4点です。
推計値であり、実績そのものではない
AirDNAの数値は、予約サイト上の公開情報から推計されたものです。予約の入っていない日と、オーナーが自分で販売を止めた日(ブロック)を完全に見分けることは難しく、稼働率には誤差が含まれます。
予約サイト以外の売上は含まれない
自社サイトからの直接予約や、対象外の予約サイト経由の売上は反映されません。直接予約の多い人気施設ほど、実態より低く見えることがあります。
掲載件数が少ないエリアほどブレが大きい
地方では、比較できる施設の数自体が少なく、1〜2軒の数字に平均値が大きく引っ張られます。定員や価格帯の違う施設が混ざると、自分の物件とは前提が合わなくなります。
過去のデータは未来を保証しない
新しい宿の開業が相次げば、エリアの供給が増えて稼働率は下がります。規制の変更やイベントの有無によっても、需要は大きく動きます。
季節による売上の波への備えは、「閑散期をどう乗り越える?」で説明しています。
試算のぶれを減らす「再現性」を高める5つのコツ
3つの工夫で、試算の大きなぶれを減らせます。似た条件の宿だけを比べる、悲観・標準・楽観の3パターンで計算する、開業直後の客足が少ない期間を見込む、の3つです。何度やっても大きくぶれないことを再現性といいます。下の1〜3がこの3つで、4と5で裏づけを足します。
- 条件の近い競合だけを比べる:エリア全体の平均ではなく、定員・広さ・価格帯・レビュー評価が近い施設を数軒選び、その数値を基準にします。
- 悲観・標準・楽観の3パターンで試算する:上の計算例のように稼働率とADRに幅を持たせ、悲観パターンでも赤字にならないかを確認します。
- 開業直後の立ち上がり期間を見込む:レビューが少ない最初の数か月は、実績のある施設と同じ稼働率にはなりません。初年度は低めに見込むのが安全です。
- 季節変動を月単位で確認する:年間平均だけでなく、閑散期の月にどれだけ売上が落ちるかを見て、資金繰りを計画します。
- 現地の実態で裏づけをとる:予約サイトのカレンダーや料金設定、地元の不動産会社・観光協会への聞き取りなど、複数の情報源で数字を確かめます。
データは仮説を立てる道具です。開業後は実際の稼働率と単価を毎月記録し、試算とのズレを見ながら価格設定や集客を直していきます。計画の精度は、これを続けて上がります。
まとめ:データを「使える数字」に変えるのは、前提の置き方
AirDNAを使えば、小規模宿の売上や利回りを、勘ではなくデータから見積もることができます。一方で、推計データの限界を理解せずに平均値をそのまま使うと、楽観的な計画になりがちです。
条件の近い競合を選ぶこと、複数パターンで試算すること、開業後に検証し続けること。この3つがそろえば、試算は投資判断に使えるものになります。
よくある質問
QAirDNAの稼働率はどのくらい正確ですか?
A予約サイト上の公開情報からの推計値のため、誤差があります。とくに掲載件数の少ない地方や、直接予約の多い施設では実態とずれやすくなります。複数の情報源で裏づけをとってから使ってください。
Qシミュレーションで最低限入れるべき費用は何ですか?
A販売手数料、清掃・リネン費、水道光熱・通信費、消耗品費、運営を委託する場合の委託費、保険・税金・修繕積立です。借入がある場合は返済額、所得にかかる税金も別途考慮してください。
Q小規模宿の利回りはどれくらいを目安にすべきですか?
A物件や運営方法によって大きく異なるため一概には言えません。悲観的な稼働率でも赤字にならず、想定した年数で投資を回収できるかを基準に判断してください。
Q開業したばかりの宿でも、競合と同じ稼働率になりますか?
Aレビューが少ない開業直後は、たいてい競合より稼働率が低くなります。初年度は低めに見込み、レビューの蓄積とともに改善していく前提で計画するのが安全です。
参考資料(3件)
- AirDNA 公式サイト(サービス・指標の説明)
- 観光庁「民泊制度ポータルサイト」
- 厚生労働省「旅館業法について」
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。