空き家の活用方法を比べる|売る・貸す・民泊にするの向き不向き
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
空き家を売る・貸す・宿にする・解体して土地を売る・持ち続ける道を比べます。売った利益から最高3,000万円を引ける決まりの条件、静岡県の解体補助、下田の宿の運営数字から、選ぶ分かれ目を整理します。
この記事のポイント
- 売るなら、3,000万円控除が使えるかが分かれ目です。売った利益から最高3,000万円を引ける決まりで、昭和56年5月31日以前の建築であること、相続から3年を経過する年の年末までに売ることが条件です。
- 解体する前に、費用の補助が使えるか確かめておくと得になる場合があります。上限は30万〜100万円で、「倒壊のおそれ」など対象が絞られ、受付を終えた市もあります(2026年10月時点)。
- 貸して宿にすれば、約14か月で費用をほぼ回収できた例があります。下田の宿は開業費用の約98%を回収しました。1年目の稼働率(部屋が埋まっている割合)は約53%で、月別では33%〜71%でした。
- 売りにも貸しにも出していない空き家は、珍しくありません。下田市は空き家4,170戸のうち約48%が、賃貸・売却用でも別荘でもない家です。
5つの道は、何を確かめると選べるのか?
結論
分かれ目は立地ではありません。売るなら控除(税の対象から引ける額)の要件、解体なら補助の対象条件、貸す・宿にするなら借り手や旅行者の動きで分かれます。
空き家の主な道と分かれ目
売る
控除の要件
- 昭和56年5月31日以前の建築
- 相続から3年を経過する年の年末まで
解体して売る
補助の対象条件
- 補助の上限は30万〜100万円
- 着工前の申請が条件の市が多い
※ 制度・金額は2026年10月時点。地域の場として使う道は、後半で短く触れます。
売るなら、3,000万円控除に入れるのか?
売るなら、3,000万円控除が使えるかが分かれ目です。相続した家は、まず国税庁の特例に入るかを確かめます。譲渡所得(家を売って得た利益)から最高3,000万円を控除(引くこと)でき、売却の時期は平成28年4月1日から令和9年12月31日までです(国税庁 タックスアンサー No.3306、令和8年4月1日現在)。
- 被相続人(亡くなった方)が住んでいた、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
- 相続開始(亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。売却代金は1億円以下。
- 家ごと売る場合は、譲渡時に一定の耐震基準(地震に耐える基準)を満たすこと。壊して敷地を売る道もあります。
- 令和6年1月1日以後の譲渡で、取得した相続人が3人以上なら控除は2,000万円まで。
要件の全体と手続きは3,000万円特別控除の記事で解説しています。最終的な適用は、税務署や税理士に確認してください。
売却そのものを相談したい場合は、当社が買取(会社が直接買い取ること)のプランも用意しています。空き家再生事業で、解体・売却・活用の収支を比べてから決められます。
解体して土地を売るなら、補助の対象条件に入るのか?
解体する前に、費用の補助が使えるか確かめておくと得になる場合があります。静岡県内の市では、補助の上限は30万〜100万円で、対象は「倒壊のおそれ」「不良度(建物の傷み具合の点数)100点以上」など、危険な家に絞られるものが目立ちます。受付を終えた市もあります(各市の公式ページ、2026年10月時点)。
多くの市で、解体の契約や着工の前に申請することが条件です。先に壊すと対象外になります。35市町の全体は解体するか、残して直すかにまとめています。
更地にすると税も変わります。住宅用地は、200㎡以下の部分で課税標準(税額のもとになる金額)が価格の6分の1になります(総務省「やさしい地方税」)。賦課期日(税額を決める基準日)の1月1日時点で住宅の敷地になっていなければ、この特例の対象外です(総務省「やさしい地方税」)。年末に壊すか年明けに壊すかで、その年の課税が変わることがあります。
壊してから売る場合も、3,000万円控除を使える道があります。条件は、取壊しから売却まで敷地を建物や構築物の敷地に使わないことです(国税庁 No.3306)。
宿にするなら、費用と収入はどれくらいか?相続した家を宿にした事例で見る
相続した家や、使っていなかった別荘を宿にした取材事例では、初期費用は約80万〜約400万円、月の純利益は平均で約25万〜35万円でした。ただし、月による差は大きくなります。
※ 取材時点のオーナー本人の申告です。収益を保証するものではありません。
家主が自分で運営せず、事業者に貸す道もあります。次の例は、借りた側(運営側)の数字です。
創業メンバーが借りて宿にした下田の一軒家では、約14か月で開業費用の約98%を回収できました。1年目の稼働率(泊まれる日数のうち実際に泊まった日の割合)は約53%で、月別では33%〜71%です。
53%1年目の稼働率計画は約40%
14か月回収まで開業費用の約98%
33%11月の稼働率12月は71%
※ 創業メンバーが個人事業として始めた、下田市の賃貸の一軒家の宿の数字です。運営施設の一例であり、すべての家に当てはまる数字ではありません。
月別の稼働率は、11月が33%、1月が39%で、12月は71%でした。売上の約14〜15%が予約サイトの手数料で、1年目は清掃の委託が約16%かかりました。宿の収入は季節で変わり、閑散期(客が少ない時期)の1月には、備品の買い替えが重なって赤字になった月もありました。だから、いちばん悪い月でも続けられる資金の余裕を、計画に入れておくことが大切です。
開業前の費用は、改修工事が約410万円、家具・家電・備品が約240万円でした。創業メンバーの開業記録の値で、自治体の補助金50万円を使っています。家は他者から借りたので、建物の取得費はかかっていません。
家主の立場で見ると、宿は「自分で運営する」か「事業者に貸す(借り上げてもらう)」かで収入の形が変わります。この例で運営側が支払った家賃は月5万円です(開業直後の資料の値)。詳しくは運営事例の記事、物件の向き不向きは民泊に向く空き家かにあります。
下田市では、売りにも貸しにも出ていない空き家は多いのか?
売りにも貸しにも出していない空き家は、珍しくありません。下田市の空き家4,170戸のうち、賃貸用は1,230戸、売却用は80戸です。賃貸・売却用でも別荘でもない空き家が2,010戸、約48%を占めます(令和5年住宅・土地統計調査、2023年10月1日)。
48%下田市2,010戸 / 4,170戸
35%静岡県104,800戸 / 296,300戸
43%全国3,856,000戸 / 9,001,600戸
※ 割合は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(e-Stat)の戸数から計算した値です。この調査は一部を調べて全体を推計する標本調査で、数字は推計値です。
私たちは、この約48%を「売りにも貸しにも出ていない家」と読み、使い道を決める前の段階にいる家が多いと考えます。
※ 売却用が80戸と少ないのは、売りに出ている数であり、買い手の需要の大きさを示すものではありません。
賃貸用に出ている空き家は1,230戸です(上の統計)。この数だけでは借り手の多さは分からないため、近隣の賃料と募集の状況を不動産会社に聞いて確かめます。
貸す道では、入居者が住める状態にする修繕や、設備の故障への対応は、貸主が負担する契約も多く、負担の分け方は契約で決まります。契約の種類による違いは空き家を貸す契約の種類で比べています。
持ち続けると、税の特例はどうなるのか?
「管理不全空家」(放置すると危険になりそうな家)や「特定空家」(倒壊や衛生の問題が著しい家)への指導に従わず勧告を受けると、住宅用地の特例が受けられなくなります(国土交通省 空き家対策特設サイト)。持ち続ける間にかかる費用は空き家を持ち続けるお金で整理しています。
迷ったら、何をどの順で確かめるか?
確認 1築年と相続の日
昭和56年5月31日以前の建築で、相続から3年を経過する年の年末までなら、売却で控除を使える可能性があります。
確認 2倒壊のおそれ
耐震診断や不良度の判定で危険とされると、解体補助の対象になる市があります。受付は年度の予算で終わります。
確認 3借り手・旅行者の動き
下田市の賃貸用の空き家は1,230戸。借り手の見込みは、近隣の賃料と募集の状況を不動産会社に聞いて確かめます。宿は月別の稼働率が33%〜71%と大きく動きました。
確認 41月1日の姿
住宅が建っているかで、その年の固定資産税の特例が決まります。壊す時期は税の面からも確かめます。
横にスワイプで続きを見られます
収入を目的にしない「地域の場にする」道もあります。三島市には、地域コミュニティ用途への改修に、補助率2/3・上限100万円の補助があります(三島市の公式ページ、2026年10月時点)。沼津市や富士宮市の解体補助にも、跡地を地域活性化に使う場合の区分があります。
まとめ:数字で確かめてから、道を選ぶ
5つの道は、売却なら控除の要件、解体なら補助の対象条件、貸す・宿なら借り手や旅行者の動きで分かれます。家の築年と相続の日、市の補助の受付状況を、先に確かめてください。
借り上げや買取、宿としての運営を含めた相談は、空き家再生事業で受けています。
よくある質問
Q売る・貸す・宿のうち、いちばん収入が多いのはどれですか?
A家ごとに違うため、順位はつけられません。比べられる数字は限られます。売る道は、相続した家なら最高3,000万円の控除で手取りが変わります。宿は下田の例で1年目の稼働率が約53%、月別では33%〜71%と大きく動きました。※ これは運営側の数字で、家主が受け取る家賃とは別です。
Q古くて傷んだ家は、壊すときに補助が出ますか?
A出る市もありますが、対象は危険な家に絞られることが多くあります。熱海市は倒壊すると避難に支障のおそれがある家、沼津市は不良度100点以上などです。受付を終えた市もあるため、市の窓口で今年度の状況を確認してください(2026年10月時点)。
Q先に壊してから、補助を申請できますか?
A多くの市町でできません。熱海市・沼津市・富士市・富士宮市などは、解体の契約や着工の前に申請することが条件で、先に壊すと対象外になります。
Q活用を始めたあとで、売ることはできますか?
Aできます。ただし、貸している場合は契約の内容によって手続きが変わります。相続した家の3,000万円控除には「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という期限があるため、売る可能性があるなら先に期限を確かめておきます。
参考資料(13件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。