観光地でなくても空き家の民泊は成り立つ?焼津の宿の計画を例に
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
有名な観光地でなくても、空き家が宿になる場合があります。観光以外の宿泊需要、静岡市・焼津の空き家の数字、焼津・鰯ヶ島で準備中の宿の計画、始める前の確認点を整理します。
この記事のポイント
- 外国人の宿泊が増えていて、観光地でなくても需要を見込める場合があります。静岡県の外国人の宿泊割合は、5.0%から8.7%に上がりました。2023年度から2024年度の変化で、外国人延べ宿泊者の割合です。
- 空き家は多いので、宿にできる家を探せる場合があります。貸しにも売りにも出ていない空き家は、焼津市に約3,300戸あります。静岡市には約17,500戸あります。
- 観光地でなくても、小さな平屋なら一棟貸しの宿を計画できます。焼津・鰯ヶ島で、木造平屋を最大4名の一棟貸しにします。約40㎡で、2026年末の開業予定です。
- 食事を出さなければ、宿泊客のお金が町の店に回りやすくなります。宿では食事を出しません。泊食分離といい、朝の魚屋、夕方の堤防、町の食堂が、宿の一部になります。
- 始める前に5点を確かめておくと、見通しが立てやすくなります。確かめるのは、泊まる人・アクセス・建物・制度・収支です。
観光地でなくても、外国人の宿泊は増え、宿の需要はあるのか?
外国人の宿泊が増えていて、観光地でなくても需要を見込める場合があります。泊まる理由は観光だけではなく、仕事や帰省といった「暮らしの用事」と、その町の日常そのものを味わう滞在があるためです。
RIVIA&CO.は、有名な観光地ではない静岡県焼津市で、宿を準備しています。この記事では焼津を具体例に、観光地でなくても宿が成り立つ理由を見ます。
「うちの実家は観光地ではないから、宿にはならない」。そう考えて、空き家の使い道を絞る前に、泊まる理由を整理してみます。有名な観光地ほど需要が分かりやすいのは事実ですが、観光地以外にも泊まる人はいます。
理由 2帰省・家族の集まり
実家のある土地へ戻る、法事や結婚式でまとまって泊まる。
理由 4ワーケーション・お試し滞在
数日〜長期、働きながら、または移住前に暮らすように泊まる。
理由 5町の日常を味わう
朝の市場、夕方の堤防、町の食堂。観光名所でなく、日常に触れる。
横にスワイプで続きを見られます
5.0%2023年度静岡県の外国人割合
8.7%2024年度静岡県の外国人割合
地方でも、外国人の宿泊は増えています。静岡県の延べ宿泊者に占める外国人の割合は、2023年度の5.0%から2024年度の8.7%に上がりました。出典は、観光庁「宿泊旅行統計調査」の総務省「社会・人口統計体系」収録値(e-Stat)です。観光庁の全体集計とは対象の施設が異なる可能性があるため、割合の動きを見る目的で使っています。
国の観光立国推進基本計画(2026年3月)も、訪日客の延べ宿泊を、三大都市圏以外の地方部で増やす目標を置いています。静岡県は地方部です。
静岡市と焼津では、宿の候補になる空き家はどれくらいあるのか?
空き家は多いので、宿にできる家を探せる場合があります。賃貸用・売却用・二次的住宅を除く、貸しにも売りにも出ていない空き家は、焼津市に約3,300戸、静岡市に約17,500戸あります(2023年)。こうした家が、宿の候補になり得ます。
※ 出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点。e-Stat)。「貸し・売りに出ていない空き家」は、賃貸用・売却用・二次的住宅を除く空き家です。標本調査の推計値です。
空き家率は住宅の余り具合を表す数字で、宿の需要は表しません。
空き家の数は、宿の需要の大きさを表しません。泊まる理由があるかは、物件の周辺ごとに調べます。収益は保証しません。収支は物件ごとの調査が必要です。
焼津・鰯ヶ島で、どんな宿をつくろうとしているのか?
観光地でなくても、小さな平屋なら一棟貸しの宿を計画できます。焼津市の鰯ヶ島(いわしがしま)で、約40㎡の木造平屋を、最大4名の一棟貸しの宿にします。2026年末の開業を予定していて、まだ運営の実績はありません。
鰯ヶ島の物件の、リフォーム前の室内です(床を開けて骨組みが見える状態)。
鰯ヶ島は、駿河湾沿いに南北約1.5kmの集落が続く「浜通り」の南端にあり、焼津の水産業の発祥の地と言われています。コンセプトは「暮らすように旅する」です。観光地を巡るのではなく、焼津の日常に溶け込む宿を目指しています。
- 食事:出さない(泊食分離)。町の食堂・魚屋・商店を使ってもらう
- 部屋と設備:畳の部屋、デスク、高速Wi-Fi。数日〜長期のワーケーションにも対応
- 移動:貸し出し自転車で、浜通り・焼津漁港・親水公園ふぃしゅーなへ
- 裏庭:約20㎡。2027年春を目安に使えるようにし、何を置くかは泊まった人の声を聞いて決める
開業後の宿泊は、クラウドファンディングで前売りします。支援者を最初の宿泊者として迎え、宿と町を一緒に育てる考えです。
食事を出さない宿が、なぜ町の魅力になるのか?
食事を出さなければ、宿泊客のお金が町の店に回りやすくなります。宿の外にある焼津の日常を、旅の中身にするためです。泊まった人は魚屋や食堂へ出かけ、消費が町に残ります。
- 泊食分離にする:朝の魚屋、夕方の堤防、町の食堂を、宿の一部として使ってもらいます。
- 近所の日常を崩さない:「よそ者」を受け入れてきた町の歴史を尊重し、近所の暮らしに合わせて運営します。
- 地元の人と仕事をつくる:清掃は地元の清掃パートナーに、食事や買い物は町の店に任せます。
下田で運営している宿(RIVIA&CO.が運営する施設の一例)でも、日常の便利さが選ばれる理由になっています。物件は駅から徒歩10分ほどで、飲食店・コンビニ・スーパーが徒歩圏にあります。ゲストのレビューの一つです。「海も近く初日の出も見ることができ、スーパーも近かったのでとても便利で快適な時間を過ごすことができました!」(Airbnbゲスト・数泊・2026年1月)観光名所の中ではなく、日常の中にあることが、喜ばれる場合があります。
創業メンバーは、移住する人を増やすことだけが答えではないと考えます。住んでいなくても、何度も訪れてお金を使い、町の人と顔見知りになる関係人口が増えれば、人とお金と新しい挑戦が町に入ります。
宿にできるかを、どう見極めるか?
始める前に5点を確かめておくと、見通しが立てやすくなります。確かめるのは、泊まる人・アクセス・建物・制度・収支の5点です。
- 誰が泊まりに来るか:周辺の企業・工場・学校・病院・イベント会場・観光地など、泊まる理由になる場所を書き出します。
- アクセス:最寄り駅や高速道路のインターチェンジからの距離、駐車場を確保できるかを確かめます。
- 建物の状態:雨漏り・シロアリ・水回りの傷みなど、改修費が大きくなる要因を見ます。焼津の宿は、水回りを新しくし、風呂場をシャワー室にする計画です。
- 制度と条例:旅館業法(簡易宿所)か住宅宿泊事業法(民泊新法)か。用途地域や、条例による営業日・区域の制限も見ます。
- 収支の見通し:周辺の宿の料金と稼働を調べ、悲観的な想定でも赤字にならないかを試算します。下田の宿の運営1年目の数字は、「下田の賃貸一軒家を宿に」で紹介しています。
向かない場面
出張や帰省で、一人で1泊するだけなら、駅前のビジネスホテルが選ばれやすいでしょう。一棟貸しは、家族やグループ、長期滞在、車での来訪のように、広さや台所が要る人に向けて設計します。
制度の違いは、「民泊新法と旅館業、どちらで始める?」で説明しています。物件ごとの見極め方は、「その空き家、民泊に向いている?」で紹介しています。
まとめ:「観光地ではない」は、あきらめる理由にならない
泊まる理由は、観光だけではありません。仕事や帰省の用事に加えて、町の日常そのものを味わう滞在があります。焼津の鰯ヶ島では、その考えで2026年末の開業を準備しています。
誰が泊まりに来るかを具体的に描き、その人に合った宿をつくることが、観光地でない場所で宿を成り立たせる出発点です。RIVIA&CO.は全国のご相談に対応しています。「うちの空き家でもできるのか」という段階から、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q観光地ではない場所の空き家でも、宿にできますか?
A可能性はあります。出張・工事・帰省・家族の集まり・長期滞在のほか、町の日常を味わう滞在など、観光以外の宿泊需要があれば、宿になる場合があります。物件ごとに需要と収支を調べたうえで判断します。
Q焼津の宿は、いつ開業しますか?食事は出ますか?
A2026年末の開業を予定しています。食事は出さない泊食分離で、町の食堂・魚屋・商店を使ってもらう計画です。約40㎡の木造平屋で、最大4名の一棟貸しです。
Q静岡市や焼津以外の地域でも相談できますか?
Aはい。RIVIA&CO.は全国のご相談に対応しています。まずは物件の所在地と状態をお知らせください。
Q宿にするには、どのくらいの費用がかかりますか?
A建物の状態や改修の範囲で大きく変わります。私たちの宿では、改修工事に約410万円、家具・家電・備品に約240万円かかりました。現地を確認したうえで、改修費と見込める収入を試算してご提示します。
参考資料(5件)
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年公表。e-Stat)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」(総務省「社会・人口統計体系」収録値。e-Stat)
- 観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)」(2026年3月27日閣議決定)
- 観光庁「民泊制度ポータルサイト」
- 厚生労働省「旅館業法について」
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。