実績ゼロで民泊開業、公庫融資400万円|元・仕出し屋を漁港体験の宿にした事例
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執筆:アキヤド編集部
監修:石原 佑真
港町の空き家になった元・仕出し屋の木造住宅を、都内で働く共働きのDさんご夫婦が借り受け、民泊に再生しました。工事費用は総額約500万円(自己資金100万円+公庫融資400万円)で、それ以外の費用は取材では確認していません。
この記事のポイント
- 実績ゼロでも、計画書の作り込みで日本政策金融公庫(公庫)の融資400万円が通った例です。観光動向と体験プランまで盛り込み、何度も説明しました。
- 地元の漁師さんとの関係から、朝の競り見学といういちばん人気のプランが生まれました。
- 高単価の宿です。平均単価は4万〜5万円、月商は60万〜70万円、純利益は月20万〜30万円(年間平均)です。
事例の概要(取材時期:2025年9月〜12月)
港町の空き家になった元・仕出し屋の木造住宅を、都内で働く共働きのDさんご夫婦が借り受け、民泊に再生しました。工事費用は総額約500万円(自己資金100万円+公庫融資400万円)です。決め手になったのは、地元の漁師さんの協力でつくった「朝の競り見学」の体験プランです。平均客室単価は約4万〜5万円、月商(1か月の売上)は約60万〜70万円で、純利益は年間平均で月20万〜30万円になっています。融資審査の乗り越え方と、体験プランの作り方を整理します。
※ 工事費用以外の費用は、取材では確認していません。
営業形態旅館業許可(宿泊業を営むための許可)を取得し、通年営業
取材対象Dさんご夫婦(都内で共働き)
物件借り受けた、元・仕出し屋の木造住宅(妻の実家の近く)
工事費用総額約500万円(自己資金100万円+公庫融資400万円)
特徴漁港での競り見学と朝酒を組み合わせた、ローカル体験プラン
費用と収支はいくら?総額約500万円、月商60〜70万円
初期費用
自己資金100万円
日本政策金融公庫の創業融資400万円(返済は月約7万円)
合計(水回り・消防設備などの工事費用)約500万円
月の収支
平均客室単価約4万〜5万円
月商約60万〜70万円(繁忙期は90万円超)
公庫の返済月約7万円
純利益年間平均で月20万〜30万円(繁忙期は月30万〜40万円)
※ 純利益は、公庫の返済、家賃、代行手数料(運営を任せる会社への手数料)、OTA手数料、光熱費などを引いた、本人申告の額です。
※ ほかに何を引いたかは確認していません。
月商60万〜70万円を平均単価4万〜5万円で割ると、月に約14泊ほどの計算です。
※ これは編集部の逆算です。
※ 単価が1室・1組・1人のどれの値か、部屋数や稼働率は、取材では確認していません。
Dさんご夫婦は、どう宿を始めたのか?
こちらの一番人気は、朝5時に漁港で魚の競りを見学するプランだそうですね。

Dさん(夫)
はい。朝5時に起きて目の前の漁港で魚の競りを見学し、獲れたての刺身を買って、宿の縁側で朝酒を楽しむ「漁港直結・ローカル体験プラン」です。SNSや予約サイトで発信したところ、都会の旅行者や外国人観光客の間で人気になりました。
その体験プランは、どう生まれたのですか?

Dさん(夫)
地元の方々との繋がりを深める中で、漁師さんたちから「朝の競りを見せてやるよ!」と言っていただいたことが始まりです。

Dさん(妻)
平均客室単価が約4万〜5万円という高単価で、月商は約60万〜70万円、繁忙期は90万円超を記録しています。
地元の方との関係から生まれた、その場所でしかできない体験が、単価の高さにつながっているとDさんご夫婦は話しています。
妻の実家の近くで、空き家を借りて宿にしようと思ったきっかけ
この場所で民泊を始めたきっかけは何だったのですか?

Dさん(夫)
私たちは都内で働く共働き夫婦なのですが、妻の実家がこの港町にあるんです。結婚してから年に数回、帰省で訪れていたのですが、年々シャッターを下ろすお店が増え、古い家が空き家になっていくのが目につくようになっていました。

Dさん(妻)
私の生まれ育った大好きな町なのに、行くたびに寂しくなっていくのが本当に辛くて。ある日、実家のすぐ近くにある元・仕出し屋さんだった立派な木造の家が空き家になっているのを見て、「この建物もこのまま誰も使わずに壊されちゃうのかな」と夫に話したんです。そしたら夫が「壊されるくらいなら、俺たちが借り受けて宿にして、この町に人を呼んでみないか?」って言い出して。
実績ゼロで公庫の融資を受けられた?審査の乗り越え方
資金繰りや融資は、どのように乗り越えたのですか?

Dさん(夫)
私たちも普通のサラリーマンですので、自由に出せる手元資金は100万円が限界でした。元仕出し屋さんの建物は広いですが、水回りや消防設備の工事には、総額約500万円(自己資金100万+日本政策金融公庫の創業融資400万)の費用が必要でした。

Dさん(妻)
一番苦労したのは、やはり公庫の融資審査でした。実績ゼロの新設個人事業主として挑んだため、「本当に素人にこれだけの金額を貸して大丈夫か?」という壁にぶつかったんです。夫が夜な夜な、近隣の観光動向や「漁港の体験」を盛り込んだ分厚い事業計画書を書き上げ、公庫の担当者さんに「この町に新しい人の流れを作る起爆剤にします」と何度も足を運んで熱弁し、なんとか満額を引き出せました。
公庫の融資と開業前に、確認したいポイントは?
- 融資審査の壁にぶつかった。 実績ゼロの個人事業主として、「素人にこの金額を貸して大丈夫か」と見られました。事業計画書を作り込み、何度も説明して乗り越えています。
- 改装に多額の資金が必要だった。 建物は広く、水回りや消防設備の工事に約500万円が必要で、自己資金100万円では足りませんでした。
解説:公庫の創業融資で押さえたいポイント
- 実績がない場合は、事業計画書の具体性が重要になります。売上の根拠(客単価・宿泊日数・集客の仕組み)や、地域の観光動向を整理します。
- 自己資金をどれだけ用意できるかも、判断材料になります。
- 借りた建物を改修する場合は、賃貸借(借りる契約)の期間と融資の返済期間が合っているかを確認します。
- 元店舗など、用途の異なる建物を宿にする場合は、規模によって用途変更(建物の使い道を変える手続き)の手続きが必要になることがあります。
地域で宿を始める前の確認リスト
- 地域の観光動向と、その土地ならではの体験を整理したか
- 売上の根拠(単価・宿泊日数・集客)を、事業計画書に書き込んだか
- 借りる建物の賃貸借期間と、融資の返済期間が合っているか
- 元の用途と宿泊施設との違いで、必要な手続きを窓口に確認したか
- 地元の方との関係づくりの方法を考えているか
Dさんご夫婦が、地域で宿を始める人に伝えたいことは?

Dさん(夫)
おかげさまで、年間を通して安定した予約が続いています。これから始める方には、次の3つをお伝えしたいです。
- 融資審査には、地域の観光動向と体験の中身まで入れた事業計画書で臨む。 実績ゼロでも、この町に人の流れを作るという具体的な計画を何度も説明して、満額の融資につながりました。
- 地元の方との関係づくりを最優先にする。 漁師さんたちとの繋がりから、競り見学といういちばん人気のプランが生まれました。
- 宿の中だけで完結させず、地域に広がる設計にする。 うちのゲストが近所の居酒屋や鮮魚店でお金を使ってくれて、街に賑わいが戻ってきました。

Dさん(妻)
地元の店主さんから「お二人のおかげで街が明るくなったよ」と言われた時は、本当に泣きそうになりました。私の実家への帰省から始まった小さな挑戦でしたが、地域に貢献しながら事業として自走できており、心からやってよかったと思っています。
この事例の取材について
- 取材時期:2025年9月〜12月。数字は取材時点のオーナー本人の申告です。
- 掲載の許諾を得ており、お名前は匿名(Dさんご夫婦)にしています。
- 数字は取材時点のものです。現在の数字とは異なる場合があります
- 本記事は個人の事例であり、収益を保証するものではありません。制度や基準は変わるため、最新の情報は各窓口でご確認ください。
ほかの事例は「民泊オーナーの事例」から読めます。関連して、「小さな宿の開業資金の用意のしかた」も参考になります。
※ 純利益は、オーナーの申告にもとづく、売上から費用を引いた額です。オーナー自身の作業時間や所得税などを含むかは、取材では確認していません。
物件や資金の進め方に迷っているときは、無料で相談できます。
よくある質問
Q公庫の創業融資は、実績がなくても借りられますか?
Aこの事例では、実績ゼロで満額の融資を受けられました。※ 審査の内容は公庫が個別に判断するため、通るかどうかは申込みごとに異なります。要件は変わるため、公庫の最新情報で確認してください。
Q借りた建物の改修に、500万円をかけて大丈夫ですか?
A賃貸借契約の期間と、融資の返済期間が合っているかを確認してください。契約期間が返済期間より短いと、改修費を回収する前に契約が終わる恐れがあります。
Q元・仕出し屋のような、宿ではない建物も民泊にできますか?
A建物の用途や規模によって、用途変更の手続きなど、必要な対応が変わります。工事の前に、保健所・消防署・建築の窓口へ事前に相談してください。
Q地域の体験プランは、どう作ればよいですか?
Aこの事例では、地元の漁師さんとの関係の中から、競り見学のプランが生まれました。まず地域の人との繋がりをつくり、その土地でしかできない体験を見つけることが出発点です。
参考資料(2件)
※ 本記事の数値・制度は公開日時点で公表されている資料にもとづきます。最新の情報は各機関の発表をご確認ください。
この記事を書いた人
アキヤド編集部
合同会社RIVIA&CO.のメディア編集部。空き家の再生から宿泊施設の運営・開業支援、WEB集客・採用支援まで、自ら宿を運営する当事者の視点で、地域の価値を活かすための情報をお届けします。
この記事の監修者
石原 佑真合同会社RIVIA&CO. 代表社員
株式会社リクルートの新規事業開発室で事業の立ち上げを経験し、その後ベンチャー企業で新規事業の創出と組織の拡大を牽引。RIVIA&CO.を共同創業し、空き家の再生と宿の運営・開業支援に携わる。